週刊 「儲け創り」 通信

〜創刊102号&103号 2005年8月7日&14日〜

発信人 株式会社 船井総合研究所 第七経営支援部 

チーフ 経営コンサルタント(儲け創り人) 望月 隆之

この週刊「儲け創り」通信は、船井総合研究所の望月隆之が、経営者、ならびに経営幹部の皆様に、 【高い顧客価値&満足 ( の創造 ) ⇒高い粗利益 ( の創造 ) ⇒高い社員価値&満足 ( の創造 ) 】⇒高い企業価値&満足(の創造)⇒高い投資家価値&満足(の創造)という「善循環」をまわし続けるためのヒント・コツ・秘訣・勘所・ポイント・要点・本質 をお伝えしていくものです。


今週の「儲け創り」のヒント

他律人「材」を活かす仕組みと人「財」を持つ組織
だけが、「1→10(イチジュウ)「承」業という、
次の成長ステージに進むことが出来る」

 文章や物事の秩序ある組み立てを意味する「起承転結」と同様に、企業の成長ステージにも、「0→1(ゼロイチ)起業」という成長ステージや、「1→10(イチジュウ)承業」という成長ステージがあることは、以前、述べました。そして、そこで活躍する起業経営者、起業役員、起業社員の能力と、承業経営者、承業役員、承業社員の能力には、大きな差異があることも、以前、述べました。これは、あくまでも、優劣ではなく、差異があるということです。イメージ的には、学校の優等生は、承業ステージに向いていて、学校の劣等生は、起業ステージに向いている場合が多いというようなことです。しかし、こと社会に出てからの評価、特に最近の社会での評価は、学校での劣等性である起業ステージ人材の評価の方が高いようです。つまり、評価の軸をどこに置くかで、優劣は全く異なってくるので、優劣ではなく、あくまで、差異ということです。
  ところで、私の人材育成に関する考え方を表現した図を次頁に掲載させていただきます。

 上記の図で言えば、最終的には、プロレベル社員である「自律」社員を育成することが、社員教育の目的となりますが、このことと企業ステージとの関係を、以下に述べさせていただきます。
 起業ステージにおいて成功する企業、つまり、次の承業ステージにランクアップする資格が与えられる組織の人材における特質は、経営者はもちろんですが、役員、社員に至るまで、そのほとんどの社員が、「自律」人材であるということです。企業規模から言ってじっくりと社員教育を行う「テマヒマ」などありませんから、役員から社員に至るまで「自律」人材でなければ、生き残れないし、業績も上がりません。「他律」と言う名の「指示待ち&規律待ち=行動の規範が他にある」人材は、たとえ間違って入社してきたとしても、定着できずに、すぐに辞めていきます。この起業ステージにおいて、経営者にとって最も大切なポイントは、「自律人材」の採用です。もちろん、どのような成長ステージにおいても「自律」人材の採用は大切です。しかし、この起業ステージにおいて、経営資源(ヒト、モノ、カネなど)のうちで最も大切な人材の採用の失敗の連続は、致命傷になりかねません。ですから、特に重要なのです。それでは、どのような採用活動を行えばよいのでしょうか?採用活動といっても経営者の魅力以外に特筆すべき経営資源がない企業ステージですから、当然、経営者自らが、「自律」人材にとって魅力ある人材であることがポイントになってきます。その経営者の魅力を考える前に、起業ステージにおける「自律」人材の特徴とは、なんでしょうか?このことを考えることが、「自律」人材を採用する上で必要な経営者の魅力を考えることになるからです。私の経験則上ですが、「自律」人材は、「行動の規範が自にある」だけに、どちらかといえば、独特の「クセ」がある場合が多いようです。大企業になってからの「自律」役員&社員とは違い、年商10億に満たない場合に「自律」社員を求めるのであれば、この「クセ」の強さには、多少、目をつぶり、採用することが大切でしょう。ともすると、他の会社では、その「クセ」の強さが災いし、なかなか活躍の場を与えられなかったような人材の中に、起業ステージにおける「自律」人材が、多くいるようです。言い替えれば、このような人材を使いこなせる経営者の器の大きさの大小が、次のステージへいけるかどうかの分かれ目のようです。
 その次です。10億までの起業ステージにおける「自律」人材を採用し、使いこなし、業績も順調に向上してくると、次のステージ「承業ステージ」の準備に入らなくてはなりません。
ズバリ!

他律人「材」を活かす仕組みと人「財」を持つ組織だけが、「1→10(イチジュウ)「承」業という、次の成長ステージに進むことが出来る」のです。

 経営者が、自らの真意を伝えることが出来る上限の人数を、経験則上7人とします。そして、その7人の部下の7人の部下、つまり、社員数が7×7=49人を超えたときから、企業は、他律「人材」を活かす仕組みと「人「財」を持つ組織にならなくては、次のステージに進むことが出来なくなります。企業としての「一体化」が保てなくなるからです。なぜなら、そのような自律人「財」ばかりを採用することは、現実的に困難であるからということが、まず、あげられます。したがって、社員として他律人「材」が多くなってくるという現実があります。そのような現実の中で組織を運営し、さらに儲け続ける強い組織にしなくてはなりません。しかし、残念ながら、そのような状況の中で、起業ステージにおける自律人「財」=「ゲリラ」型自律人「財」は、49人を超えた組織を動かすやり方を知りません。場合によっては、そのようなやり方を、軽蔑さえしてしまう精神性を持っているのが、「ゲリラ」型自律人「財」の特徴だからです。これがもうひとつの理由です。組織の中で、やむを得ず増えていく他律人材と、他律人材を活かすやり方を知らないゲリラ型自律人「財」。その結果として、組織全体としての「混乱」と「非効率」が、日常化していくのです。このような状態では、次のステージには進めません。処方箋はふたつ。まずは、既存のゲリラ型自律人「財」の成長を促進すること。もうひとつは、49人を超えた組織(他律人「財」も多く含む)を動かすやり方になれた正規軍隊型自律人「財」をヘッドハンティングしてくること。そのどちらかを決め、実行したうえで、他律人「財」を動かす仕組み(≒評価制度、会議体系、管理会計など)を導入することです。これが、10億を超えて100億を目指す企業(≒株式上場)に必要な儲け続ける強い組織の創り方の概要(詳しくは、2005年11月2日の「実践!儲け続ける強い組織の創り方」にて。宣伝です!)です。ちなみに私の経験では、時流に適応できれば、その勢いで1000億まで行ってしまう企業もあるようです。しかし、その企業の内情は、他律人材を活かす仕組みがない、もしくは、機能していないので、私から見れば、「砂上の楼閣」のように映ります。現にほころび始めているようですが、残念ながら、その起業オーナー経営者は、見当違いの対応しか取れていないようです。

「ビジネスの成功の本質」

 どうやら、ビジネスの成功の本質は、以下のようなもののようです。

@ 事業領域の選択(20%)
A 経営者の人格及び企業風土の良さ(80%)
→ビジネスの成功

緊急度と申しましょうか、まずは、事業領域を間違えると成功できないようです。正しい事業領域の選択の仕方としては、「時流適応」ですから、それも、将来性の高さがポイントでしょう。これは比較的理解しやすいお話かと思います。
次に、緊急度としては、事業領域の選択の次になりますが、重要度においては、80%を占めるもの、それが経営者の人格と企業風土の良さです。将来性の高い事業領域を選択しても、成功できる経営者、企業とそうでない場合があるのは、ここに原因があります。経営者の人格と企業風土の良さをもう少し具体的に言えば、例えば、「Win−Win(自利利他)の関係(顧客との関係、社員との関係、取引先との関係、すべてのステークホルダーとの関係)創り」を、志しているかどうかということです。先週、ブックオフの坂本社長のお話を聞かせていただく機会があり、あらためて、そのように思いました。業界トップランナーのブックオフを真似た企業が、一時は、30社ほどあったようですが、どれも消えてしまったそうです。ビジネスモデルは比較的単純で、誰でも真似が出来そうなものでさえ、このような結果になるのですから、いかに、経営者の人格及び企業風土の違い、つまり、志の高低が、成功に影響を与えるかの、まさに教科書のようなお話でした。それにしても、世の中には、単なる「サルマネ」企業の多いことか。 上部構造の「やり方(方法、仕組み、ノウハウ等)だけではなく、下部構造の「あり方(経営理念、コンセプト等)までも含めて、成功事例から学んでいただきたいものです。

 

今回、初めて、お読みいただいた方々のために、「儲け創り」に関する望月隆之の基本的な考え方をお伝えします。

経営とは、「儲けを創り続ける事」です。それでは、ここで言う儲けとは、「顧客に満足していただくという意味でのパフォーマンスをアップし続けることと、そのパフォーマンスをアップすることにつながるコストは使い、逆に、つながらないコストをカットすることにより、その結果として、コスト総額をダウンし続けることから産み出されるもの」です。したがって、ハイパフォーマンスオペレーションとローコストオペレーションの組み合わせ=顧客の満足創りと、そのために必要なコストは使い、必要ではないコストをカットするという意味でのローコストを飽くことなく追求し続けることによって、粗利を付加し続けることこそが経営と言えます。つまり、顧客にとっての高い満足・価値を創り続けることが経営です。ということは、そのためのコストは、期待できるお買い上げ額に対する一定の比率以下であれば、いくらかけてもいいし、逆に、そのためにならないコストはたとえ1円であってもムダであり、そのような視点で様々な経営判断を行なうのが経営者、もしくは、経営幹部の仕事です。特に成熟した消費社会である日本市場においては、単なる価格訴求のローパフォーマンス=粗利を削減し続けることによる顧客の満足創りは、成功し続ける経営とは呼べません。さあ、皆さん、ハイパフォーマンスをローコストで実現し、高顧客価値・高粗利益・高社員価値経営を実現し続けましょう!


望月隆之の事業理念

私がこの聖堂(≒事業)を完成させることが出来ないことは悲しむべきことではない。私は年齢を重ねていく。代わってこの聖堂(≒事業)を再び始める他の者たちが現れるだろう。このようにして、聖堂(≒事業)はさらに壮麗なものになろう。

(アントニ・ガウデイ「ガウディの言葉」より)



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