週刊「儲け創り」通信

〜創刊120号 2005年12月11日〜
発信人 株式会社 船井総合研究所 第七経営支援部

チーフ 経営コンサルタント(儲け創り人) 望月 隆之

この週刊「儲け創り」通信は、船井総合研究所の望月隆之が、経営者、ならびに経営幹部の皆様に、「儲け創り(=経営=マネジメント)」のポイント をお伝えしていくものです。


 今週の「儲け創り」のヒント

「企業価値を高め続ける経営構造の善循環(続き)

 「企業価値を高め続ける」ということが、経営者にとって、経営上、最も大切な目的になります。別な言い方をすれば、株主に始まり、顧客、社員等のステークホルダー(利害関係者)の利害を調整し、ベストバランスを創り出し続けること=業績を上げ続けることが、経営者にとって、最も大切な目的なのです。まずは、この経営構造を理解し、それを踏まえた具体的な実践がなければ、経営者は、すべてのステークホルダーとの約束=業績を上げ続けることが出来ないので、その経営構造と、その善循環を図に表現してみました。

 まずは、経営者が起点になります。「企業が儲け続けられるどうかは、99.9%経営者で決まる。」と言うのが、船井流の基本的な考え方のひとつで、それが経営における起点になります。自社の社員の能力不足を嘆く経営者も少なくないのですが、この図が示す通り、経営者の質が社員の質を決めるので、社員の能力不足は、経営者の能力不足なので、自社の社員の能力不足を嘆くのは、まさに「天に唾する行為」と言えます。経営者の能力以上の社員は、入社してきませんし、間違って入ってきても、自分の能力以下の経営者がいる企業では、早々に見限って辞めていきます。もっとも、「おのれよりも賢明なる人物を身辺に集むる法を心得し者ここに眠る(デール・カーネギー「人を動かす(創元社より)」)」と自らの墓碑銘に刻ませた鉄鋼王アンドルー・カーネギ−のような経営者も存在します。
そして、実は、このデール・カーネギーの言葉こそ、オーガナイジング(組織創り)において、非常に重要で、大切で、本質的な考え方になります。自分より能力が低い社員はもちろんのこと、自分より能力の高い社員さえも、上手に使いこなせる属人的力量=リーダーシップと、組織的な仕組み創りこそが、オーガナイジング(組織創り)の本質だからです。
社員数が7名を超えると、社員の力によって、業績が左右されるようになってきます。結論から言えば、企業価値向上=業績向上の源泉の源泉は、もちろん経営者ですが、その手前の源泉は、社員であり、社員のモチベーションアップこそ、経営者にとって、最も重要な業務なのです。
ですから、ちなみに、今、流行の企業買収においても、無能な経営者に対する敵対的買収と言うことは、ありえます。無能な経営者を代えれば、業績向上が出来るからです。現実に、そのような企業は、日本の場合、特に、多いと思います。しかし、有能な社員(無能な社員であれば、そもそも買収する意味がありません)に対する敵対的買収と言うのはありえません。企業買収の目的は、あくまで企業価値向上=業績向上であり、その企業価値向上の源泉が社員ですので、その源泉である社員に対して敵対すると言うことは、企業買収の目的である企業価値の向上=業績向上と矛盾するからです。社員は、経営者や、株主は選べませんが、生産性の高い、優秀な社員だけには認められている流動性の高い労働市場を経由して、ライバル企業に「転職」することは出来ます。話を元に戻します。
経営者は、社員数が7名を超えると、「経営者の代行者」としての社員(=幹部)育成に手をつけなくてはなりません。マーケティング(市場創り)戦略創りが上手で、時流をとらえることが出来ますと、事業規模だけが肥大化し、社員数100名、もしくは、年間売上100億に、すぐになってしまいますが、「烏合の衆」の社員では、ちょっとした時流の変化に耐えられません。かといって、社員数が100名ともなりますと、経営者ひとりに力ではどうにもなりません。「経営者の代行者」を育成してこなかったツケを払わされることになります。ことほどさように、経営者にとって、また、企業において、社員育成は、実は、最重要ポイントです。モチベーションの高い社員を揃える事。これこそ、企業価値=業績向上の源泉なのです。ちなみに、社員創りに関して、もう少し、具体的に申し上げれば、目指すべきは、「少数精鋭」です。人件費総額は、減らし、1人当りの給与は増やすのです。景気の動向に関わらず、生産性の高い優秀な社員は、限られています。優秀な社員が、ライバル企業に移ってしまう前に、手を打つべきでしょう。優秀な社員を確保することにおいて、給与以上に大切な企業理念、経営理念の確立と具体的実践は、もちろん、給与や人件費総額の件に手をつける以前の問題です。優秀な社員ほど企業理念や、経営理念の内容とその実践のレベルの高さが、企業選択のポイントだからです。
  ここまでが、企業経営におけるオーガナイジング(組織創り)の範囲です。オーナー創業経営者の場合、ほとんど100%、マーケティング(市場創り=商品と営業)のプロですが、オーガナイジング(組織創り)においては、ほとんど100%、アマチュアです。当然です。生まれながらにして、リーダーシップを属人的に持っている人の方が、経験則上、少ないですし、まして、それを仕組みにしていくとなると、ほとんど知らない経営者ばかりです。しかし、恥じることはありません。先ほどのカーネギーの言葉のように、経営者は、「知っている人を使いこなす能力」さえ持っていれば良いのです。
  次にマーケティング(市場創り)の範囲となります。実は、これさえ上手にできれば、つまり、時流に乗ることさえできれば、年間売上2000億くらいまでいってしまうようです。オーガナイジング(組織創り・人創り)も何もありません。実際にそういう会社も多数あります。それくらい、企業経営においては、根幹と言えます。登場するのは、顧客と商品です。顧客のお求めを想定し、そのお求めに対応した商品を仕入れたり、開発したりして、購買していただきます。想定顧客のお求めに応じた商品を仕入れたり、開発したりして購買を創るのです。購買を創りこと=市場を創ること、これがまさにマーケティング(市場創り)なのです。成功のポイントは、先ほど書いたように、何より時流に乗ること。時流と言う名前の顧客のお求めの変化に対応すること。これこそ、マーケティングの本質です。ここさえはずさなければ、経営は、絶えることなく、継続可能です。その間に、オーガナイジング(組織創り)を行う時間的余裕も生まれます。とにかく、マーケティング(市場創り)がポイントです。
  このように、マーケティング(市場創り)とオーガナイジング(組織創り)によって、経営(マネジメント)は構成されています。従って、まずは、マーケティングを押さえ、その次にオーガナイジングを押さえれば、その結果として、業績は上がり、株主の期待に応えることが出来ます。そうすれば、経営者は、株主に、次年度の経営を委ねて頂ける事になるのです。これが、経営構造の善循環です。

 

今回、初めて、お読みいただいた方々のために、「儲け創り=経営」に関する望月隆之の基本的な考え方をお伝えします。

経営とは、「儲けを創り続ける事」です。それでは、ここで言う儲けとは、「顧客に満足していただくという意味でのパフォーマンスをアップし続けることと、そのパフォーマンスをアップすることにつながるコストは使い、逆に、つながらないコストをカットすることにより、その結果として、コスト総額をダウンし続けることから産み出されるもの」です。したがって、ハイパフォーマンスオペレーションとローコストオペレーションの組み合わせ=顧客の満足創りと、そのために必要なコストは使い、必要ではないコストをカットするという意味でのローコストを飽くことなく追求し続けることによって、粗利を付加し続けることこそが経営と言えます。つまり、顧客にとっての高い価値=満足を創り続けることが経営です。ということは、そのためのコストは、期待できるお買い上げ額に対する一定の比率以下であれば、いくらかけてもいいし、逆に、そのためにならないコストはたとえ1円であってもムダであり、そのような視点で様々な経営判断を行なうのが経営者、もしくは、経営幹部の仕事です。特に成熟した消費社会である日本市場においては、単なる価格訴求のローパフォーマンス=粗利を削減し続けることによる顧客の満足創りは、成功し続ける経営とは呼べません。さあ、皆さん、ハイパフォーマンスをローコストで実現し、「高顧客価値創造⇒高粗利益創造⇒高社員価値創造⇒高企業価値創造」経営を実現し続けましょう!


望月隆之の事業理念

私がこの聖堂(≒事業)を完成させることが出来ないことは悲しむべきことではない。私は年齢を重ねていく。代わってこの聖堂(≒事業)を再び始める他の者たちが現れるだろう。このようにして、聖堂(≒事業)はさらに壮麗なものになろう。

(アントニ・ガウデイ「ガウディの言葉」より)

 

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