週刊「儲け創り」通信

〜創刊123号 2006年1月8日〜
発信人 株式会社 船井総合研究所 第七経営支援部

チーフ 経営コンサルタント(儲け創り人) 望月 隆之

この週刊「儲け創り」通信は、船井総合研究所の望月隆之が、経営者、ならびに経営幹部の皆様に、「儲け創り(=経営=マネジメント)」のポイント をお伝えしていくものです。


 今週の「儲け創り」のヒント

(取捨)選択と集中」
選択と集中とは、
@(取捨)選択を考え(=戦略立案)
A集中して動く(=実行徹底)
のふたつが成功のポイントであると言うこと。
有限の経営資源(ヒト、モノ、カネ、その他)を活かして、
最大の成果を上げる(=経営)には、
まず、はじめに、@(取捨)選択(=戦略立案)。
つまり、何を取り、何を捨てるかがポイントであると言うこと。
つまり、「何を捨てるか!」が、最も重要な戦略のポイント!

中小企業の失敗の多くは、この段階の失敗。
つまり、よく考えないで、動くので、結果的に、徒労が多いと言うこと。
それでなくても、経営資源が少ないのだから、
良く考えよう!
次に、A集中して動く(=実行徹底)だが、
大企業の失敗の多くは、この段階での失敗。
つまり、よく考えて、立派な戦略を描くが、描きっぱなしと言う事例が多い。
それでなくても、経営資源が多いのだから、
良く動こう!


 「選択と集中」と言う言葉は、非常に良く使われている経営用語のひとつですが、今回は、私なりの解釈をお話したいと思います。
 まず、「選択」についてですが、新明解国語辞典(三省堂第6版)によれば、「幾つかの中からよい(適当な)ものを選ぶこと」と書かれています。しかし、私は、
 「選択」と言う文字の前に「取捨」という文字が隠れていると考えています。文字通り、「取ると捨てる」です。つまり、「選択」とは、「何かを取り、何かを捨てること」という意味であると考えます。「何かを取り、何かを捨てる」と言うことは、その際に何らかの基準がなくては、取ることも捨てることも出来ないので、何らかの基準が必要になります。この基準を、どのようなものにするのかが、実は、結果としての成功と失敗のすべてを決めると言っても過言ではないでしょう。つまり、何を取り、何を捨てるかの基準、もしくは、成功する基準=目利きの力=見極める力こそが、戦略の根幹をなすものなのです。
この戦略の根幹で誤ると、その後のすべての努力は、徒労に終わると言って良いでしょう。労を惜しんで(=実行不徹底で)失敗するのは論外として、失敗や成功の分岐点は、実は、ここにあるのです。何を取り、何を捨てるかを決定した時点で、勝負の大半は、決まるのです。取ると決めたものに対して、ありとあらゆる経営資源を投入し、成功させるために実行をしていくわけですが、実は、実行の方法が間違っていることで失敗する場合は、ほとんどありません。失敗する場合のほとんどは、具体的な実行以前の戦略、つまり、何を取り、何を捨てるのかと言う選択(=戦略立案)の時点での過ちに原因があります。ところが、成功できない企業のほとんどが、この戦略=何を取り何を捨てるのかという最も大切なところで、慎重に考えることなく、ただ闇雲に動いて失敗するのです。成功したければ、「何を取り、何を捨てるのか」、つまり、「何を捨てるのか」という戦略立案時点で、しっかりと徹底的に考え抜くことが重要になります。この工程なくして、成功はないといっても過言ではないでしょう。もちろん、時流は常に変化していますから、制限時間内であることも非常に重要ですが、あまりに「考えなしに」動いて失敗している中小企業が多すぎると思います。かつてのような人口増加期、日本経済の高度成長期であれば、戦略等がなくても、ただ闇雲に動くだけでも成功することは可能でしたが、人口減少期の今、あまりに無謀です。ことの重要性から考えて、戦略立案時点で、比較的多くの経営資源を使うことは、成功する上で非常に重要な要素であることは間違いありません。繰り返しますが、現在は、ただ闇雲に動けば成功できる「恵まれた時代」ではないのですから。
  (取捨)選択=戦略立案の重要性については、充分にご理解いただけたと思います。それでは、戦略立案する際の重要なポイントは何でしょうか?それは、目利き力、見極め力です。その目利き力、見極め力の「基準」のひとつが、「力相応」「分相応」です。経営資源は、常に有限ですから、それを活かして、最大の業績を上げるには、投入できる経営資源を見極めて、目利きして、取捨選択を行うことが大切なのです。集中(=実行徹底)の段階において、失敗しないためにも、取捨選択の時点で、目利き力、見極め力を働かせることが重要なのです。
  もうひとつ、「基準」をお話しておきますと、「知行合一」というものがあります。私が尊敬をしている、ある経営者の方から教えていただいたのですが、陽明学の考え方だそうで、「知識と行為」についての考え方で、「本当に知ると言うことは必ず実行を伴うものである」と言うことだそうです。逆から考えれば、「実行するために知る」と言うことです。「知るために知る(手段の目的化)」と言うことではなく、「実行するために知る(目的と手段が明確)」ですから、有限資源の中で最高の成果を上げるために、「力相応」「分相応」で、「取捨選択」することが大切ということでしょう。実行出来ないことは知る必要がないということです。つまり、実行の段階で役に立たない情報は、収集する意味がないということです。情報も、ただ闇雲に収集すればよいということではなく、使用する段階を踏まえて、収集することが大切だと言うことでしょう。有限資源、例えば、有限時間の中で、何らかの形で成功するために実行するわけですから、成功するために必要がないと思われることは、知る必要がないということですね。個人的にも、企業経営においても。成功する個人、成功する企業と、失敗する個人、失敗する企業の最大の差は、ここにあると思います。成功することに直線的に向かっているかどうか。つまり、目的が明確になっているかどうか。目的が明確になっていれば、手段の取捨選択の判断は、非常にスピーディーに出来ますから。つまり、目的の取捨選択さえ出来ていれば、手段の取捨選択は、非常に簡単なことであり、成功する確率も高くなるということではないでしょうか?

以上、2005年の年末から2006年の年始にかけて、自宅の仕事部屋の大掃除をした際、船井総研入社以来、つまり、過去8年間で最も多くの「捨てる!」を実行するなかで、「捨てる!」の重要性について再認識しつつ、考えたことをまとめてみました。おかげさまで、自分自身の「人生戦略」が明確になりました。今年も、よろしくお願いいたします。

 

今回、初めて、お読みいただいた方々のために、「儲け創り=経営」に関する望月隆之の基本的な考え方をお伝えします。

経営とは、「儲けを創り続ける事」です。それでは、ここで言う儲けとは、「顧客に満足していただくという意味でのパフォーマンスをアップし続けることと、そのパフォーマンスをアップすることにつながるコストは使い、逆に、つながらないコストをカットすることにより、その結果として、コスト総額をダウンし続けることから産み出されるもの」です。したがって、ハイパフォーマンスオペレーションとローコストオペレーションの組み合わせ=顧客の満足創りと、そのために必要なコストは使い、必要ではないコストをカットするという意味でのローコストを飽くことなく追求し続けることによって、粗利を付加し続けることこそが経営と言えます。つまり、顧客にとっての高い価値=満足を創り続けることが経営です。ということは、そのためのコストは、期待できるお買い上げ額に対する一定の比率以下であれば、いくらかけてもいいし、逆に、そのためにならないコストはたとえ1円であってもムダであり、そのような視点で様々な経営判断を行なうのが経営者、もしくは、経営幹部の仕事です。特に成熟した消費社会である日本市場においては、単なる価格訴求のローパフォーマンス=粗利を削減し続けることによる顧客の満足創りは、成功し続ける経営とは呼べません。さあ、皆さん、ハイパフォーマンスをローコストで実現し、「高顧客価値創造⇒高粗利益創造⇒高社員価値創造⇒高企業価値創造」経営を実現し続けましょう!


望月隆之の事業理念

私がこの聖堂(≒事業)を完成させることが出来ないことは悲しむべきことではない。私は年齢を重ねていく。代わってこの聖堂(≒事業)を再び始める他の者たちが現れるだろう。このようにして、聖堂(≒事業)はさらに壮麗なものになろう。

(アントニ・ガウデイ「ガウディの言葉」より)

 

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