週刊「儲け創り」通信

〜創刊43号 2004年5月30日

発信人 株式会社 船井総合研究所 第三経営支援本部 

チーフ 経営コンサルタント(儲け創り人)望月 隆之

この週刊「儲け創り」通信は、船井総合研究所の望月隆之が、経営者、ならびに経営幹部の皆様に、【高い顧客価値&満足(の創造)⇒高い粗利益(の創造)⇒高い社員価値&満足(の創造)】⇒高い企業価値&満足(の創造)⇒高い投資家価値&満足(の創造)という「善循環」をまわし続けるためのヒント・コツ・秘訣・勘所をお伝えしていくものです。


今週の「儲け創り」のヒント

「情熱起点」

世界を動かすもの、それは情熱である。

アントワーヌ・ド・サン=デグジュペリ

 

(上記は、私が、船井総研に入社することが決まっていた1997年の秋に参加させていただいた船井総研・小山政彦専務(当時)のセミナーのテキストの最初に書かれていた言葉です。)

 私事で恐縮ですが、今日、小学4年の長男と二人で、中学受験の志望校選択の一貫として、ある進学校の体育祭を見学してきました。中高一貫校なので、高校3年から中学1年までの6学年が、赤、白、青、黄と4色のチームに分かれていました。そうすると、同じ色のチームの中に高校3年から中学1年までが存在することになるのですが、その中で、上級生の下級生に対するリーダーシップと言う点で学ぶ点がありました。このようなリーダーシップ教育とか、エリート教育と言う点は、日本の教育で決定的に欠けている点だと思います。誤解のないようにお話しておきますと、ここでいう「エリート」とは、「この世界で学校に通え、食べ物も衣服も十分に与えられ、不自由のない暮らしが出来、他人を助ける余裕を持っている女性は約千人に一人なのです。そのたった一人の存在であるあなた達は残り999人のために働かねばならない。人のために役立てるエリートになりなさい。(辛 淑玉さん(在日コリアン3世)が「女が社会で生きるには」という演題で女子学院(私の長女が通っている学校)で語ったものの一部)」と言う意味です。私学で、中高一貫校だからこそ、このあたりのことがきちんと教育できるのだろうと思いました。自分自身が受けてきた中学高校(ともに公立)の教育(特に先生の質=情熱!)との違いに驚くともに、長女や長男が、すこし、うらやましく思いました。

今日の体育祭は、他にも、いろいろと見所や、学んだ点があるのですが、一番強く感じたのは、「ほとばしる情熱の存在」であり、やはり、世の中のことは、すべて、「情熱起点」なのだなあということです。冒頭に掲げた「世界を動かすもの、それは情熱である。」という言葉を、あらためて思い出させてくれました。確かに進学校であることは間違いないのですが、そんなことより何より、体育祭というものに、あれほどの情熱を持って取り組める生徒とその環境を素晴らしいと思いました。「傍観者意識」ではなく、常に「当事者意識」を持って、何事にも取り組む姿勢=スタンスの良さ。経営者にとって大切なのが「はらわた(ドンキホーテ 安田社長)」であれば、社員にとって必要なのは、「当事者意識」。いつでも、どこでも(=時空超越で)「当事者意識」を持って仕事に取り組む姿勢。そして、経営者と社員と立場は違っても、そこに共通するものは、自らの人生に対して「情熱」を持ち続ける姿勢=スタンス。経営者にとってのビジネスモデルや、社員にとっての能力ももちろん大切なことではあるが、根本は、情熱。








 世の中のことすべてが、「情熱起点」だとすれば、人材の採用や育成においても「情熱の有無」が人材の見極めのポイントになります。しかも、情熱は、潜在化してしまっているものを顕在化させることは出来ても、そもそも持っていない人材や、長い時間をかけて情熱の存在を消し去ってしまった人材に持たせることは不可能に近いことですから、人材の採用において、最も大切なポイントは、情熱の有無になります。もちろん、(ビジネス)能力が高いことに越したことはありませんが、根本は、あくまで「情熱の有無」です。なまじっか(ビジネス)能力が高くても、情熱のない人材を採用すると、他の社員の成長意欲を妨害する「害人(材)」になってしまう可能性が高いでしょう。その逆に、(ビジネス)能力が多少低くても、情熱さえあれば、時間が彼に(ビジネス)能力をもたらせてくれるでしょう。

このあたりのことをワイキューブの安田社長は、採用される側の学生に向けて以下のように語っています。「企業が採用の際に重視しているのは能力とスタンスです。スタンスとは、責任感、成長意欲、自立心や目標達成癖など物事への取り組み姿勢です。欲しい能力と言うのは、会社によっても採用年度によってもかなりばらつきますが、スタンスだけは必ず注意して見ています。会話をするとすぐにわかるのです。スタンスが悪ければ、どこの会社も欲しがりません。だから学生時代に大事なのは、実はスタンスを磨くことなのです。」

 人材の採用を、非常に独特な視点で行っている会社に、首都圏で年商70億の仕出し弁当の製造・配達を行っている玉子屋という会社(東京都大田区http://www.tamagoya.co.jp/kaisha/rinen.html)があります。経営理念も「事業に失敗するこつ」という非常にユニークなものですが、詳しくは、玉子屋さんのホームページをご覧下さい。この会社の採用は、「私は、悪ガキしか信用しない」という社長独特の人物鑑定眼により行われています(日経ベンチャー2004年4月号より)。この記事自の中で社長は、悪ガキの説明を魚の「天然」と「養殖」に例えて説明されています。「養殖の魚は、いけすの中でえさを貰って育つ。人間で言うと、親や学校の先生が敷いたレールの上を走るタイプのことで、人間自身が持っているエネルギーが少ない。一方で、天然の魚は自らえさを取る。人間なら、自分で物事を考えて決めてきたタイプのこと。悪ガキたちはこれにあたる。そういう人間は、心の中に大きなエネルギーを持っているんだ。」まさに、「情熱起点」ですが、その上で、悪ガキの長所を3つ上げています。「1、実は勉強熱心。学校と言う場でお勉強をする機会がなかっただけで、仕事を覚えるスピードは速い。2、実は顧客志向。人に感謝されることが何よりうれしい。お客のためなら上司とけんかするのも平気。3、実は逆境に強い。年下でも力のあるものが上に立つのが当たり前だと考えている。降格人事でもやる気を失わない。」

 いかがでしょうか?

追記

強い組織を創るには・・・

ダーウィンの進化論によれば、生物が生き残る上で最も必要な能力は、強いことでも、賢いことでもなく、変化対応力だそうです。企業に置き換えて考えますと、変化に対応できる経営組織が、強い経営組織と言うことになります。ここで言う強い経営組織とは、強い個人の集団で形成されるもの、と私は考えています。それでは、その強い個人とはどのような個人のことなのでしょうか?私が考える強い個人とは、自律性の高い個人のことを指します。それでは、自律性の高いということは、どういうことでしょうか?様々なことが考えられますが、最も大切なのは、「コストパフォーマンス」を、「自ら律すること」が出来ること(≒経営者(的)意識)でしょう。わかりやすく言えば、「自分の給料分の粗利益を稼ぐ意識」を、常に持って行動できるということです。変化対応力のある強い組織創りの「はじめの一歩」は、社員に「自分の給料分の粗利益を稼ぐ意識」を徹底させることでしょう。何をするにも大切な「傍観者意識ではなく、当事者意識を持ち続けること」の起点もここにあると思います。



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