週刊「儲け創り」通信 〜創刊46号 2004年6月20日 発信人 株式会社 船井総合研究所 第三経営支援本部 チーフ 経営コンサルタント(儲け創り人)望月 隆之 この週刊「儲け創り」通信は、船井総合研究所の望月隆之が、経営者、ならびに経営幹部の皆様に、【高い顧客価値&満足(の創造)⇒高い粗利益(の創造)⇒高い社員価値&満足(の創造)】⇒高い企業価値&満足(の創造)⇒高い投資家価値&満足(の創造)という「善循環」をまわし続けるためのヒント・コツ・秘訣・勘所をお伝えしていくものです。 今週の「儲け創り」のヒント
「企業の目的と(その目的を達成させるための)手段」
広義の企業の目的は、「社会性(=社会への貢献=顧客価値の創造)」の確保ですが、狭義では、「自社性(=利益を創り続けること)」の確保になります。別な言い方をすれば、社会性と自社性(車の両輪!)の両立の結果として、「資本利益率」を高めることが企業の目的であるといっても良いでしょう。そのように社会性と自社性を重なり合わせて行う活動のこと=経営そのもののことを、私は、「儲け創り」と呼んでいます。ですから、「儲け創り」とは、結果として、資本利益率を高める活動であるという言い方も出来ます。いつもお伝えしているように「儲け」とは、「信の者」と書くように、「信」のあるところに利益が集まるこという言い方も出来ます。終点=結果としての「利益」、始点=原因としての「信」という言い方も出来ます。
ちなみに、いつも申し上げているように、「信」を社外の人(のココロ)である顧客(のココロ)との間で創り上げることが、顧客とのコミュニケーション=マーケティングです。そして、「信」を社内の人(のココロ)である社員(のココロ)との間で創り上げることが、社員とのコミュニケーション=マネジメントです。つまり、経営(を上手に行うコツ)とは、コミュニケーションです。 顧客とのコミュニケーションが下手な経営者というのは、少なくとも、創業経営者には、ありえないことでしょう。狭義の企業経営の始点である売上が立ちませんから。しかし、大企業の経営者には、結構いるようです。雪印をつぶしてしまったあの経営者、三菱自動車をつぶしかけているあの経営者、三菱グループをつぶしかけているあの経営者・・・既存売上が大きい企業の経営者は、広義の経営の視点が顧客価値の創造であることを知らないかのような振る舞いをしてしまうようです。何もしなくても売上が立つ状況というのは、人を腐れさせてしまう可能性が高いということでしょうか? 社員とのコミュニケーションが下手な経営者というのは、結構多いようです。既にお伝えしているように、「使ってやっている」という無意識の意識が邪魔をするようです。最も高い経費である人件費の有効活用=生産性の向上を真剣に考えるならば、当然の成り行きで、社員とのコミュニケーション上手になるべきです。 顧客とのコミュニケーション、社員とのコミュニケーション、いずれの場合も、上手になろうとすれば、まずは、そのことが業績向上のために非常に重要であるという認識をもつことが大切です。充分にその重要性を認識して頂かないと、あらゆるコミュニケーションの具体策が、「魂のこもらない」形式だけのものになってしまい、成果を上げられないからです。次に大切なのは、コミュニケーション相手を好きになることです。顧客をお金儲けの道具としか見られないようでは、コミュニケーション上手にはなれません。顧客が、あなたの足元を見抜くからです。心の底から好きになること。社員に対しても同様です。社員を、やはり、お金儲けの道具のひとつとして、少しでも考えているならば、そのことは、すべて社員に伝わります。@業績向上のためには、コミュニケーションが大切であると認識すること。Aコミュニケーション相手である顧客はもちろんのこと、社員でさえも好きなること。好きになる努力をすること。以上2点をまず、心がけていただければ、事態は、必ず、好転し始めます。 話を元に戻します。 企業の目的を正しく認識し、行動しようとする=「儲け創り」をしようとする=正しい経営をしようとするならば、その手順は・・・ 上記のようなプロセスになります。 ですから、もし、企業の経営がうまくいかないことがあるとすれば、そのプロセスのどこかに問題があるわけですから、きちんと問題のあるプロセスを明確にし、そのプロセスにおける問題点を把握し、改善&改革する必要があるわけです。
業績が芳しくない経営者の方とお話するときに、良くあるのが、「売上が伸びない」というところからのお話です。その場合の解決策のポイントは、(善意に解釈すれば、あまりに当たり前の大前提なので省略してしまっているのかもしれませんが、)「顧客価値の創造」なくして、結果としての「売上」もないし、「利益」もないということです。悪意に解釈すれば、経営の本質が、全くわからずに経営してしまっている(!)経営者だということです。キーポイントとしての売上という話であれば、理解できます。たしかに、上記の計算式で考えれば、資本利益率を上げるためには、いずれにしても売上がポイントだからです。しかし、業績向上の始点としての「顧客価値の創造」や、終点としての「利益の増加」という全体のプロセスのなかにおける「売上」という視点のない、単なる、目先の「売上」増加の話(=売上増加対策を教えて欲しい!)というのでは・・・目先を切り抜けることも、もちろん大切ですが、なぜ、自分の会社がこんな状態になってしまっているのだろうか?という原因を追求する姿勢のない、短絡で、浅薄なお話では・・・ 「経営理念でメシが食えるか!!!」なんていう経営者には、(特に1970年代後半以降)「経営理念がなくてメシが食えるか!!!」とお伝えしておきます。
ところで、短絡で浅薄といえば・・・ 日本のホワイトカラーのほとんどが、実はそうなのかもしれません。日本の1945年以降の繁栄は、99%ブルーカラーの方々の創意工夫によって支えられたといっても過言ではないでしょう。日米の売上高販管比率の違い(米国15%日本24% ソフトブレーン社の資料から)もそのことを示しています。世界に冠たるトヨタの「カイゼン」だってブルーカラーの方々の賜物です。ホワイトカラーの定義が、「頭の汗をかく人」だとすれば、頭の汗をかいたことのないホワイトカラーはなんとお呼びすればよいのでしょうか?「ブルーカラーの方々が稼いだ利益を食いつぶすだけの人々」とでもお呼びすればよいのでしょうか?ホワイトカラーの生産性向上は、日本のほとんどの企業において、今すぐ、取り組むべき課題です。そうすれば、まだまだ、利益は創れるのですから。営業の極意は、「G(義理)N(人情)P(プレゼント)」などといっている場合ではないでしょう。 日本のホワイトカラーが浅薄で短絡であるという事例として・・・ たとえば、欧米から持ち込まれる様々な経営手法に対する取り組み方が挙げられます。経営手法とは、例えば、「リエンジニアリング」とか、「成果主義」とか「執行役員制」等のことです。経営手法ではありませんが、一時期の「IT(インフォメーションテクノロジー=情報技術)」などに対する取り組み方も同様でしょう。ですから、実は経営手法に限られたことではなのですが、様々な経営手法を導入しようとする時に、まず大切なのは、その経営手法が産み出された背景・理念・コンセプトなどの「あり方」をよく理解することです。リエンジニアリングで言えば、アメリカ企業は、製造現場だけではなく、間接管理部門までも視野に入れた取り組みを行ったということです。業務プロセス全体を根本から再編成することで全体の生産性向上を目指したという背景があるのです。その背景を前提とした理念としては、既存組織の壁を取り払うというものです。その上で、ITをベースとした業務プロセスの再編成をトップダウンで推進することをコンセプトにしたものです。日本では、背景を無視し、理念を除外し、コンセプトを理解しようとせずに、すぐに現場でつかえると思われる部分、リエンジニアリングで言えば、人員削減の改善効果のためだけの方法を部分的に導入したけれども、人事評価&処遇制度との整合性をとることが出来ずに、現場の反発を受けて頓挫してしまったケースが多かったようです。どのような経営手法であれ、その経営手法の「あり方」という根本・本質に関する理解なく、しかも、部分的に導入・実践しても成功できるはずがありません。「成果主義」という「やり方」を導入すれば、すべてがうまくいくとか、「IT」という「やり方」を導入すれば、すべてがうまくいくとか、ホワイトカラーの浅薄・短絡のおかげでどれほど企業の利益が流出してしまったことか(怒れブルーカラー!)・・・いつもお話するように、経営手法に限らず、物事にはすべて、目には見えないが、非常に大切な「あり方=基本的な考え方」があり、そのことの理解の上に、目に見えるものとしての「やり方=方法」があるわけです。まさに「(抽象的な)理論のない実践は、成功しない。(具体的な)実践なき理論は空しい。」ということでしょう。我々経営コンサルタントは、「実践的な理論」をお話することが重要ですし、経営者の方は、「理論的な実践」をすることが大切だということでしょう。
また、話がそれましたが・・・ 企業の目的を正しく認識できれば、先ほどお話した手順に従って具体策を、考え、動くことになります。 |