週刊「儲け創り」通信

〜創刊67号 2004年11月21日〜

発信人 株式会社 船井総合研究所 第三経営支援本部 

チーフ 経営コンサルタント(儲け創り人)望月 隆之

この週刊「儲け創り」通信は、船井総合研究所の望月隆之が、経営者、ならびに経営幹部の皆様に、【高い顧客価値&満足(の創造)⇒高い粗利益(の創造)⇒高い社員価値&満足(の創造)】⇒高い企業価値&満足(の創造)⇒高い投資家価値&満足(の創造)という「善循環」をまわし続けるためのヒント・コツ・秘訣・勘所・ポイント・要点・本質をお伝えしていくものです。

 

今週の「儲け創り」のヒント

 

「形を創って、魂を入れる」

 

 「形を創って、魂を入れる」という言葉は、2004年7月末に、損保ジャパンの代表取締役副社長(年収4000万)を辞めて、社会保険庁長官(年収2000万)に就いた村瀬清司氏が、社会保険庁の改革のポイントについて、2004年10月頃に、語ったものです。私が、経営コンサルタントとして、つまり企業の経営改革の推進役として、常に心掛けていることのひとつを、見事に一言で言い表した言葉であり、非常に強く記憶に残りました。このことは、実は、経営に限ったことではなく、物事すべてに、「形」的な側面と「魂」的な側面があり、この両面を押さえないと、どんなことでも成功させることは難しい、出来ないということでもあると思います。

 経営に限って言えば、「形」とは、仕組みのことであり、それは、「利益を創る仕組み」、「売上を創る仕組み」、「お客様のココロを掴む仕組み」などの「仕組み」とか「行動」つまり、「目に見えるもの(=可視)」のことであり、私がこれまで「やり方」と表現してきたものと同様のことです。「魂」とは、そこで働くすべての人々の「意識」とか「考え方」つまり、「目に見えないもの(=不可視)」のことであり、私がこれまで「あり方」と表現してきたものと同様です。

「意識」が「行動」を規定しますから、例えば、経営改革においては、まず、「意識」改革から着手すればいいようなものですが、「目に見えないもの」だけに、すべての社員に理解させ、実行させるのは、極めて難しいことになります。ですから、まず「形を創る」ところから手を付けます。つまり、新しい「形を創る」ために、「目に見えるもの」として、何らかの仕組みなどを変える事(出勤率を上げることや、清掃などの5Sを徹底させることなどでも、もちろん結構です。)をきちんと行うことになります。その新しい「形」が創られた=定着したその結果として、新しい「魂」が入ることになります。まさに、「形を創って、魂を入れる」ということです。魂が新しくなれば、その新しい魂=「意識」が、新しい「行動」=形を導き出します。ここまでくれば、経営改革は、ほぼ、成功したといっても良いでしょう。「新しい、善き魂」は、次々と「新しい、善き形」を創り出してくれます。善循環の始まりです。

 私が経営コンサルタントとして、経営者から「問題解決」のご依頼をいただいた時に、まず行うことは、企業の経営全体を拝見させていただくことです。その上で、「形」の状態、「魂」の状態を把握します。主にトップとのヒアリングを通して、経営全体を把握し、その上で、問題の原因を特定します。問題の主な原因は、「形」の場合もあるし、「魂」の場合もあります。問題を抱えている大企業の場合、「形」は創ってあるが、「魂」が入っていない場合が多いようです。つまり、問題は、「魂」です。業務の形骸化、形式ばかりが先行しているような状態のことです。大企業の社員が得意なことは、「形」を創ることであり、苦手なのは、「魂」を入れることです。大企業の子会社がうまくいかない場合のほとんどが、この場合です。その逆に、問題を抱えている中小企業の場合、「魂」は入っているのですが、「形」がないことにより、非常に非効率な業務が行われている状態が多いようです(「魂」も「形」もない企業は、存在しません。すぐに潰れてしまいますから)。中小企業の社員が得意なことは、「魂」を入れることであり、苦手なのは、「形」を創ることです。中小企業が、大企業になれない場合のほとんどが、この場合です。「問題解決」としては、それぞれ不足している部分を補っていくようにしていきますが、大切なことは、「形」も「魂」も両方ともに、業績を上げる、成功するために必要なことであり、そのどちらがかけてもうまくいかないということです。ちなみに、大企業に「魂」を入れるためには、「魂」を入れなければ生きていけない状況を、社員に中に創り出すしかありません。つまり、社員の意識を「自律」させることが必要なわけですが、そのためには、個人別、部署別の損益を明確にすることにより、「自律」せざるを得ないような状況を創り出す必要があるのです。京セラで有名な「アメーバ方式」といわれるものの導入です。一方、中小企業に「形」を創るためには、「業務改革」を通して、効率的な業務の遂行というものを理解させ、実行させなくてはなりません。目に見える仕組みの重要性を理解させ、実行させる必要があるのです。

 ヒアリングを通して行う問題の原因の特定ですが、「形」と「魂」という「ものさし」とは別に、「マーケティング(市場化(市場で買って頂ける)商品の創造)」と「オーガナイゼーション(組織化(組織で求められる)人財の創造)」という「ものさし」もあります。この「ものさし」を使って問題の原因の特定を行う場合もあります。ただし、トップとのヒアリングのおいて、トップの自己診断、例えば、「業績が思ったように上がらないのは「マーケティング」的な側面の問題である」というようなものを、鵜呑みにすることはありません。ここが非常に重要な点ですが、それを鵜呑みにして、いくら「マーケティング」的な側面でコンサルティングを行っても、本当の問題の原因が、もし、別にあれば、結果として業績は上がらないからです。一見「マーケティング」的な側面が問題の原因であるかのように見えて、実は、「オーガナイゼーション」的な側面、例えば、社内コミュニケーションの問題である場合が少なくないからです。トップのマーケティング戦略は正しいのに、その戦略が正しく実行されていないのが問題の本当の原因であるとすれば、問題の所在は、トップとミドルやボトムとの社内コミュニケーションにあるわけです。その場合、ではなぜ、トップの意思が伝わらないかですが、「形」としてのコミュニケーションの仕組み(=会議など)が整っていない場合があります。その場合は、まず、会議体系を創り、行うことが、はじめの一歩です。または、「魂」としての意識の問題、例えば、コミュニケーションの重要性を理解していないとか、もしくは、そもそも、何らかの理由があって、トップとミドル、もしくは、トップとボトムの間に溝があり、「面従腹背」のような状況があるのかもしれません。その場合、「面従腹背」という状況を創り出してしまった原因を特定し、対策を立てて、実行しなければ、成果は上がらないでしょう。マーケティング的な側面の問題であるかのように見えて、実は、オーガナイゼーションの問題、社内コミュニケーションの問題である場合もあります。いずれにしても、「形」も大切、「魂」も大切であり、その両方が上手に機能しないと業績は上がらず、成功できません。

これらのことからわかることのひとつに、経営コンサルタントのレベルの高低とか、総合型経営コンサルタントか、専門型経営コンサルタントかというような経営コンサルタントの評価があります。これは、医者を評価する場合と同じ事ですが、患者(=問題を抱えた企業)の状態を見て、本当の問題の原因を特定し対策を立てる=仮説を創る力があるかどうかです。レベルの低い医者や、レベルの低い経営コンサルタント、もしくは、専門型の医者や専門型の経営コンサルタントは、問題の原因の特定を自分の得意な専門の領域にしがちです。と言いますか、自分の得意な専門の領域を通してしか、企業や患者の状態を把握できないといっても過言ではないでしょう。例えば、「販売促進」専門型経営コンサルタントは、どんな問題でも、問題の原因を販売促進にしてしまう傾向があるということです。企業の問題を解決した経験の少ない経営コンサルタント、もしくは、専門型経営コンサルタントに仕事を依頼する場合、依頼する側が、本当の問題の原因を特定していることが必要です。そのような場合、もし、本当の原因の特定を間違っていたら、いくら、専門型経営コンサルタントが優秀でも、決して成果は出ないからです。例えば、患者と医者と言うことで考えると、患者の自己診断として「単なる風邪だから風邪薬を下さい。」と言ってきても、医者の診断の結果、実は、単なる風邪ではなく、もっと別の重大な病気という場合もあるということです。患者の自己診断を鵜呑みにしては、場合によっては、さらに病気を悪化させる場合もあるのです。ですから、最も望ましいと思われるのは、専門領域を持ちつつも、経営に関して総合的な観点も持っている経営コンサルタントでしょう。その場合、例えば、もし、依頼する側の問題の原因の特定が間違っていた場合でも、その間違いを正し、問題の本当の原因を特定し、その上で、自ら対策を立てるか、もしくは、その問題解決が得意な専門型経営コンサルタントの力を借りることが出来ます。総合的な観点を持っていない専門型経営コンサルタントには、問題の原因の特定が間違っていることを正すことは出来ませんから、依頼する側の問題の原因の特定が間違っていたら、間違えっぱなしです。その場合、依頼する側はもちろん、依頼される側も不幸です。「Win―Win」な関係を創ることが出来ません。

話がそれてしまいましたが、いずれにしても、企業が業績を上げるためには、「形」も大切、「魂」も大切、両方大切です。そして、何らかの問題がある場合、「形」の問題なのか、「魂」の問題なのかを、まず、把握することです。「形」の問題の場合、「魂」の対策を実行しても成果は上がりませんし、その逆も同じです。また、「マーケティング」と「オーガナイゼーション」においても同様です。まずは、問題の原因の特定を正しく行うこと。その際の「ものさし」のひとつとして「形」と「魂」という「ものさし」は非常に有効です。是非、使ってみてください。



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