週刊「儲け創り」通信
〜創刊69号 2004年12月5日〜
発信人 株式会社 船井総合研究所 第三経営支援本部
チーフ 経営コンサルタント(儲け創り人)望月 隆之
この週刊「儲け創り」通信は、船井総合研究所の望月隆之が、経営者、ならびに経営幹部の皆様に、【高い顧客価値&満足(の創造)⇒高い粗利益(の創造)⇒高い社員価値&満足(の創造)】⇒高い企業価値&満足(の創造)⇒高い投資家価値&満足(の創造)という「善循環」をまわし続けるためのヒント・コツ・秘訣・勘所・ポイント・要点・本質をお伝えしていくものです。
今週の「儲け創り」のヒント
「成果主義の本質と
日本的「実践(だけ=やり方だけ)主義」の限界」
成果主義に限らず、どのような経営手法であっても、表層の「実践(だけ=やり方だけ)主義」や、「システム(だけ=仕組みだけ)主義」では、うまく運用できません。うまく運用するには、その深層である「コンセプト(考え方=あり方)」や、理論をよく理解した上で、実践を行うというプロセスが欠かせません。表面だけを「猿真似(!)」してもうまくいかないというのは、極めて、当然の話ですが、少なくとも、日本では、当然の話ではないようです。(以前、私が在籍していた東急ハンズが、世間の注目を浴びていた頃(1980年代後半)、東急ハンズのモノマネショップが、雨後の竹の子のように乱立しましたが、どのモノマネも、その深層=コンセプトをきちんと把握していなかったので、キレイさっぱりと消えてしまいましたね。)今、成果主義を巡って起きている混乱や批判は、じつは、成果主義自体の問題ではなく、極めて日本的な「実践(だけ=やり方だけ)主義」の限界を示しています。つまり、非常にレベルの低い混乱であり、批判です。「形(形式)を創って、魂(実質=意識)を入れる。」という、別の切り口で言えば、成果主義の失敗の原因は、「形(形式)だけ創って、魂(実質=意識)は、知らない。もしくは、変えない。」ということですから、そもそも、成功するわけがない話です。成功させるためには、何事も同様ですが、「形を創って、魂を入れる。」必要があります。魂(実質=意識)の入っていない、または、以前と何ら変わっていない、形だけの成果主義がうまくいかないからといって、成果主義と言う経営手法がだめと言う批判は、全く的外れで、「批判のための批判」ですね。実践に命を吹き込む(=成功させる)のは、理論の正しい理解があってこそ。私も、別に「成果主義」というひとつの経営手法に対して特別な思い入れがあるわけではありません。目的達成のための手段のひとつに過ぎないわけですから、ダメなものは止めればいいし、良いものは使えばいいと考えているだけです。企業の目的からすれば、短期的だけでなく、なるべく長期的に企業の利害関係者が繁栄できるような経営手法が良い手段です。そういうことから考えれば、「成果主義」は、その形と魂において、極めて優れているもののひとつではないかと考えているだけです。正しく導入すれば、極めて有効精度の高い経営手法のひとつであると考えているだけです。企業とは、まず、顧客価値を創り出し、その結果として、利益を創り出し、社員、株主に報いるものですから、社員の人事評価処遇制度のコンセプトとしては、「長期的、短期的に、顧客価値の増加=自社利益の増加に対する貢献度の高い社員を高く評価する」というものでなければなりません。その意味において、「年功序列」は、150%!!!間違っていますが、「終身雇用」は、企業への忠誠度を高めたりするなどのメリットも多いと考えられるので正しいのではないでしょうか?その意味において、「成果主義」は、比較的、有効精度の高い経営手法ではないでしょうか?
ところで、アマゾンドットコム(amazon.co.jp)で「成果主義」を検索してみますと、1位「内側から見た富士通成果主義の崩壊(光文社)」2位「隣の成果主義(光文社)3位「虚妄の成果主義〜日本型年功復活のススメ 日経BP社」となっており、上位はすべて「成果主義批判の書」になっています。
1位「内側から見た富士通成果主義の崩壊(アマゾンドットコムホームページより」
出版社/著者からの内容紹介
日本を代表するリーディングカンパニー leading company だった富士通は、「成果主義」 performance-paid system
の導入にあたってもリーディングカンパニーだった。富士通が「成果主義」の導入に踏み切ったのは、1993年。以来、この制度を導入する企業はどんどん増え、いまでは、日本企業のほぼ7割がこの制度を導入している。しかし、この「成果主義」が、結果的には富士通をボロボロにしてしまった。
元・富士通人事部社員だった筆者が、その現場 inside で見たものは、「社員のやる気 motivation が引き出され、働いた者が公平に評価 fair evaluation されることによって、企業はますます発展する」といううたい文句とは、あまりにもかけ離れた世界だった。
無能なトップ top management とそれに群がった無能な管理職が、この制度を使いこなせず、社員の士気 morale は低下。社内には、不満 complaint と嫉妬 jealousy が渦巻き、自殺者まで出るという惨状が出現してしまった。
2004年、富士通は3年連続の赤字 deficit を回避するため、社員の給料 pay のカットまで追い込まれた。もはや、「成果主義」は死んだも同然である。
はたして、「成果主義」は社員になにをもたらすのか?
富士通の「成果主義」による崩壊collapseは、けっして他人事ではない。
2位「隣の成果主義(アマゾンドットコムホームページより)」
出版社/著者からの内容紹介
わが社の制度は“最悪”なのか?――見えそうで見えない“隣りの成果主義”。100社を超える日本の上場企業を徹底取材!
著者からのコメント
■筆者は長年、人事担当者、経営者、そこで働く社員に取材をしているが、今年は特異ともいうべきある現象が起こった。取材で人事部の担当者に会うと、一様に、「溝上さん、『虚妄の成果主義』読みましたか? あれに書いてあることをどう思いますか?」と、“逆取材”されるようになったのだ。『虚妄の成果主義』とは、東大教授・高橋伸夫氏の著書だ。かなり反響を呼んだので、読まれた方も多いだろう。■そして、今は行く先々で、「溝上さん、『内側から見た富士通』読みました? 噂には聞いていましたけど、うちはあそこまでひどくはないでしょう?」である。同書は、この光文社ペーパーバックスシリーズから刊行された、元富士通人事マン・城繁幸氏の著書だ。富士通の成果主義の問題点を、まさに内側から告発した内容で、20万部を越えるベストセラーとなったので、これも読まれた方は多いと思う。■この2つの事実からわかることは、「人事部の人間でさえ、成果主義の“実態”に関する情報に飢えている」ということ。そして、「日本企業のほとんどは、いまだに自社の成果主義に対して確固たる自信を持っていない(だから情報収集に躍起になる)」ということである。■今でも多くの人事担当者が成果主義で悩み、彼らなりに情報収集し、学習を重ねている。だが、これまで述べてきたように、人事部自体もその「答え」を持ち合わせておらず、現在も模索中だ。その意味で、他社の失敗例は、成果主義をいかに運用していくかを考えるうえで、1つでも多くほしい貴重な情報なのだ。■本書では、筆者が取材の過程で見てきた数多くの“失敗事例”を紹介している。なかには「こんなひどい企業もあるのか」と、驚く人もいるだろうが、すべて実際にあったことだ。ここでは、そういった“成果主義の現実”を、できるだけ克明に紹介したつもりだ。
3位「虚妄の成果主義〜日本型年功制復活のススメ〜アマゾンドットコムのホームページより」
出版社/著者からの内容紹介
揺れるトップ、悩める人事、落ち込む一般社員におくる、学問的立場からの初の「成果主義」粉砕の書。
著者は、経営学・経営組織論を専門とする気鋭の東大経済学研究科教授の高橋伸夫氏。精力的な企業フィールドワーク、実態調査に基づく実証的な研究、鋭利な理論構築で知られる。その高橋教授が、学問としての経営組織論の最新の定説を踏まえながら、様々な企業現場でのエピソードもまじえつつ、軽妙な語り口で「成果主義」の無惨で愚かしい正体を解き明かす。草木もなびくその流行、普及を目の当りにしながも、長く「成果主義」への疑念が頭を離れなかったサラリーマンが本書を読み出せば、平明で説得的な内容に魅せられて一気に読了し、必ずや仕事への勇気が与えられるはずである。
内容(「MARC」データベースより)
揺れるトップ、悩める人事、落ち込む一般社員におくる、「成果主義」の愚かしくも、無惨な正体。講演資料を元に、実像としての「日本型年功制」が現場の実態や感覚からして、いかに素晴らしいものであるのかを説く。
著者からのコメント
私自身はもともと経営組織論が専門の経営学者であり、人事労務の専門家でもなければ、労働経済学者でもない。しかし、過去10年以上にわたって、かつては年俸制の導入、近年は成果主義の導入に対して、一貫して異を唱えてきた。
(略)私が最も言いたいことは、昨今の人事制度、特に成果主義の導入をめぐって巷で言われていることには重大な事実誤認があるということなのである(本書「はじめに」から)。
1位の「内側から見た富士通成果主義の崩壊」については、今回、お話をさせて頂いている「形を創って、魂を変えず」の典型的な事例でしょう。大企業の優等生サラリーマンがよくやることですが、仕事をしているフリをするために「形だけを創って、肝心要の魂を変えない。本当に変えるのは、労力がかかって大変なのでやらない」と言う「やらされ仕事」の結果でしょう。大企業に本当に多い事例です。要は、本気で仕事をしていないということですね。もちろん、こんな優等生サラリーマンは、大企業には腐るほどいるので、最終的にはそれを見抜けない「おめでたい経営者」がマヌケだったということですね。「成果主義」が悪いのでもなんでもない。ダメな経営者がトップにいる企業が、たまたま、成果主義を導入したことをキッカケに、ダメになるスピードが加速しただけのことでしょう。
2位の「隣の成果主義」は、100社の失敗事例を集めたものです。この事例を見ていると、日本人は、本当に、コンセプトから考えるのが、嫌いなんだなあと思います。結局、安直なんでしょうね。深層のコンセプトから考えるのは、本当にしんどいですから。表層のノウハウだけを真似して、仕事をやったフリをしているほうが楽ですから。じつは、個別の人生についても同様ですね。人生哲学なんかを考えるところから始めるのはしんどいですが、単なる金儲けを実践するのは楽ですから。
3位の「虚妄の成果主義」は、さすが東京大学の教授。国民から巻き上げた税金で飯が食える高いご身分の方だけあって、かすみを食って生きているかのごとくの分析。この本の中で想定されているような人間が、どれだけ、現実にいるのでしょうか?少なくとも、そのような人間だけで、株式会社を繁栄させ続けるのは、極めて難しいでしょう。論外の話ばかりです。「批判のための批判」とはこのことを言うのでしょう。「顧客価値創り&自社利益創りに対する貢献度が、非常に高い社員」であると社内の誰もが認めるにも関わらず、年功制の報酬体系であるがために、報酬が低いにも関わらず、辞めない社員がいたら、是非、見てみたいものです。単なる金儲けのために書いたのではないでしょうが、たちの悪い本ですね。
つまり、成果主義の導入に関しては、魂を変える=意識改革が大前提だということです。もう少し、具体的に言えば、例えば、自社においての顧客価値とは何か?自社利益とは何か?というレベルから議論を重ねて、最終的には、「自社にとっての成果とは何か?」という全社的な議論なくして、成功はありえないということです。「成果とは何か?」という議論になれば、それが、単なる売上数値、利益数値だけでないことは、明白です。そのあたりの認識が、全社的に共有化された上で導入すれば、短期的のみならず、長期的にも、繁栄を約束する人事評価処遇制度となるでしょう。
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