週刊「儲け創り」通信


〜創刊72号 2005年1月9日〜

発信人 株式会社 船井総合研究所 第三経営支援本部 

チーフ 経営コンサルタント(儲け創り人)望月 隆之

この週刊「儲け創り」通信は、船井総合研究所の望月隆之が、経営者、ならびに経営幹部の皆様に、【高い顧客価値&満足(の創造)⇒高い粗利益(の創造)⇒高い社員価値&満足(の創造)】⇒高い企業価値&満足(の創造)⇒高い投資家価値&満足(の創造)という「善循環」をまわし続けるためのヒント・コツ・秘訣・勘所・ポイント・要点・本質をお伝えしていくものです。

 

今週の「儲け創り」のヒント

 

「個人力と組織力」

経営の目的と手段

成長し続けるという経営の目的のための

手段としての個人力(=自律力)重視、組織力(=他律力)重視

そして、そのベストバランス

 

 経営の問題の解決に限らず、人生で起こる様々な問題の解決においても、「目的(何のために)と手段(何をする)の問題」、つまり、「目的(何のために)の明確化」は、非常に大切なポイントです。「手段(何をする→どのようにする)の一人歩き」は、実は、勝負以前の段階で、時間などのあらゆるコストの無駄使いという点で、負けています。当たり前のことのようですが、しかし、このあたりまえのことが出来ずに、「堂々巡り」をした挙げ句、経営が傾いてしまう場合も多いようです。以前取り上げた成果主義における「富士通の失敗」は、トップが無能であったために、「人事部の独走=成果主義の導入という手段の目的化」を許したことが原因で、経営は、大混乱を招き、業績は悪化しました。経営全体の中で成果主義をどのように位置付け、「何のために(=目的を明確にする)」導入するのかという「あり方・哲学・理念」なく導入したことが、混乱の原因です。繰り返すようですが、富士通の場合、成果主義が悪いのではなく、トップがトップの最も大切な要件である経営理念を持っていないことが問題なのです。

 「目的と手段の問題」を、経営における「組織論」に当てはめると、以下のようになります。つまり、成長し続けるという目的のために、どのような手段=組織を選択すればよいのか?自律性の高い組織で行くのがよいのか、他律性が高い組織で行くのがよいのか?結論から申し上げると、社員の個人力が高ければ、つまり、自律力が高ければ、社員の個人力、自律力に任せて、組織は、なるべく、社員の邪魔をしない、規則で縛らない形が望ましいと言えます。逆に、社員の個人力が低ければ、つまり、自律力が低ければ、他律力、組織力で、結果を出す=成長し続けるしかないのです。自律力が低いのに、他律力、組織力でカバーしない場合、経営は、混乱する=生産性が低くなります。つまり、大切なことは、その時々の社員の力のレベルに応じて、「自律と他律」「個人と組織」のベストバランスをとることが出来れば良いということです。現実的には、まず、新入社員、一般社員に対して、自律力をつけさせることを前提で、他律=教育し、自律力がついたら、幹部に登用するということになります。

もちろん、事業の内容や、職種によっても「自律と他律」「個人と組織」のベストバランスは変わってきます。いくら、自律が理想といっても、例えば、電車の運転手が、全体の規則、例えば、ダイヤを無視する形で、自分の判断を優先させて運転されても困りますから。また、自律力があるほうが望ましい、もしくは、なければ困る、務まらないような職種、例えば、小売業の商品企画担当、製造業の商品開発担当などの職種においても、なりたてのビギナーには、規律=他律力が必要となります。また、ベテランにおいても、成長し続ける、つまり、結果を出し続けているのであればともかく、成長していない、結果を出していない場合は、「自律の軸がぶれている可能性」がありますから、いったん、基本に戻って、他律=マニュアル通りに、業務のすすめ方を徹底してみることも大切になります。

 日経ビジネスの1月3日号の新春特別対談「挑戦者を育てよう」で、神戸製鋼所ラグビー部ゼネラルマネージャーの平尾誠二氏とファーストリテイリング社長の玉塚元一氏が対談を行っています。この二人、実は、同学年で、1985年のラグビー全国大学選手権の決勝を戦った仲だそうです。試合は、10対6で平尾さんの同志社が、玉塚さんの慶応に勝ったそうですが、その時のそれぞれのチーム状況が、「個人力、自律力の同志社」と「組織力、他律力の慶応」だったそうです。「平尾がいて、大八木がいて、土田がいて・・・(強い個人の連携というプレースタイル)というドリームチームの同志社」「突出して強い選手のいない慶応は、いわゆる体育会系の根性練習をして、皆の意識を統一してひたすら泥臭くタックルに行くプレースタイル。」結果的には、ドリームチームの同志社が勝つわけですが、その平尾氏が「皆が良く失敗するのは、やり方だけを真似するからなんだ。当時のメンバーは個人の能力が優れていたから、個人に任せても良かった。しかし、個人の力が劣っているときは、戦略や戦術で補わないといけない。個人の力の代わりに、戦略を付加しないと、全体のチーム力が高まらないわけだから。状況を見極めずに、「個人が勝手にやるのが我々の伝統だ」とやっていると勝てなくなる。同志社が低迷している理由は、ここにあるような気がする。」とおっしゃっています。それを受けて、玉塚氏は、「その通りですね。だから、慶応が同志社に絶対勝つんだと目標を決めて、熱を帯びて体育会的にやったことを全面否定する必要はないんです。ただ、組織は個人の集まりですから、個人の力が伸びるようにしなければならない。」とおっしゃっています。まさに、組織運営の要、勝ち続ける、成長し続ける組織のポイントは、メンバーが持っている、その時の力にあわせて、柔軟に対応すること、つまり、「個人と組織」「自律と他律」のベストバランスを、常に考えながら、経営側が指示を出すことにあるというわけですね。船井流に言えば、「力相応こそ高効率」ということでしょうか。それにしても、この二人の対談、組織論、つまり、2005年の今、勝ち続ける組織をどう創っていくかという点において、非常に、素晴らしい対談となっています。「先の見えない時代には「一糸乱れぬ」はリスクあり、だから個人技が求められる」とか、「成熟した個が集合体となって問題解決する、これが一番強いチームだ」とか、本質を突いた素晴らしい言葉の数々(読まれてない方は、是非、買って読んだほうがいいと思います!)。成熟した個=自律力がある個人の育成には、非常に「テマヒマ」がかかりますが、様々な問題に直面した時に、すぐに解決策を指示するのではなく、解決策を、まず、自分の頭で考えさせるような根気強い対応を取るしかありません。経営者や、経営幹部が、本気で強い組織、強い個人を創る気があるのであれば、ぜひ、地道にコツコツ、社員の方に「自分の頭で考えさせる」ようにしてください。ご自分が優秀であれば優秀な経営者&経営幹部であるほど、このことは、苦痛であるようです。イライラするようです。しかし、元々、自律力が高い=個人力が高い人をヘッドハンティングしてくる以外には、他に、自社で個人力の高い人を育てる方法はありません。「自分の頭で考える」習慣を身に付けさせて、しかも、問題解決にあたって、なるべく良い解決方法を、なるべく素早く考え出せるように育てるには、非常に時間がかかりますが、他に方法はないのです。是非、地道にコツコツ!



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