週刊「儲け創り」通信


〜創刊75号 2005年1月30日〜

発信人 株式会社 船井総合研究所 第六経営支援部 

チーフ 経営コンサルタント(儲け創り人)望月 隆之


この週刊「儲け創り」通信は、船井総合研究所の望月隆之が、経営者、ならびに経営幹部の皆様に、【高い顧客価値&満足
(の創造)⇒高い粗利益(の創造)⇒高い社員価値&満足(の創造)】⇒高い企業価値&満足(の創造)⇒高い投資家価値&満足(の創造)という「善循環」をまわし続けるためのヒント・コツ・秘訣・勘所・ポイント・要点・本質をお伝えしていくものです。

 

 

今週の「儲け創り」のヒント

 

「(独自固有の)長所伸展(船井幸雄 船井総研 最高顧問)

長所伸展とは・・・

「強みを活かす」ということであり、

「(取捨)選択と集中」ということであり、

「(ナンバーワンより)オンリーワン」ということ。

 

 船井総研の最高顧問である船井幸雄は、私が今ここで、あらためて申し上げるまでもなく、最高の経営コンサルタントの1人です。その船井幸雄が創った数々のキーワードの中でも、特に「長所伸展」というキーワードは、その重要度において、間違いなく上位にランクされるもののひとつでしょう。この「儲け創り」通信をお読み頂いている読者の方々に、「長所伸展」のお話をするのは、「釈迦に説法」のようで、少々気が引けるのですが、今週、私の経営コンサルティングの現場で、あらためて、その凄さに感心したので、お話したいと思います。「長所伸展」とは、上記のように、一般用語で言えば、「強みを活かす」ということであり、「(取捨)選択と集中」ということであり、「(ナンバーワン)よりオンリーワン」ということでしょう。最近でこそ、このような一般用語で語られることが多いのですが、船井幸雄がはじめてこの言葉を使った当時の日本において、「長所を伸展させるだけでいい、短所は改善しなくていい」というキーワードは、非常に衝撃的だったと思います。当時の日本において、教育といえば、「短所改善」を意味していたといっても過言ではなかったはずですから。そして、今でも、そのような傾向が残っていますが。まずは、そのように、時代のさきがけという意味での凄さに感心しています。次に、このキーワードは、個人の戦略や、企業の戦略の意思決定に対して、非常に有効な考え方であるという点です。特に、創業間もない企業や、中小零細企業が、大企業に対して、勝負を挑む時、または、挑まざるをえない時において非常に有効であるということです。例えば、成長著しいドラッグストア業界においては、様々な合従連衡のすえに、いくつかの大きなグループが成立しています。たとえば、「マツモトキヨシ」を中心とするグループなどがあります。この大手中の大手である「マツモトキヨシ」は、独自のドミナント戦略によって一昨年までは、関東周辺にしか出店していませんでした。しかし、一昨年から、いよいよ関西方面に集中出店し始めました。その際に、関西を地元とする中小ドラッグストアや、中小薬局などが取るべき戦略は、ふたつしかありません。大手中の大手である「マツモトキヨシ」と同じ土俵である「価格訴求」の土俵に乗り、「勝負を懸ける」か、大手中の大手である「マツモトキヨシ」と違う土俵である「価値訴求」の土俵に移り、「勝負を懸ける」しかないわけです。厳密にいえば、「無為無策」という選択もありますが(実際、ほとんどの中小ドラッグストアや、中小薬局は「無為無策」ですが)、これは、経営戦略とはいえないので、無視することにしますから、やはり、同じ土俵の「価格訴求」か、違う土俵の「価値訴求」しかないわけです。薬小売業界は、それまで、「薬屋」という「業種店」しか存在していなかったところに、はじめての「業態店」として「雑貨の低粗利×高回転と薬の高粗利×低回転」という販売方法を持つドラッグストアが登場し、業界の爆発的な成長を遂げました。その成長をベースに、実は、今、ふたつ目の「業態店」が求められているのです。それが、「価値訴求」という違う土俵を意味しています。消費者に対して、常に、新しい販売方法(=新業態)を提案し続けることが、(製造業における新商品の開発と同様に)小売業の経営者にとっての使命であるわけですが、薬小売業界の経営者は、そのほとんどが「素人同然」なので、そのような「使命」を持たないで商売をしているようですが(だから、ほとんど「無為無策」ですが)、実は、既に、このような「価値訴求」の「薬小売業」は、消費者の潜在的欲求にもなっています。飽和状態の「玉石混交」の情報に対して、自分の健康にとって、それぞれの情報がどのような意味を持つのかを知りたいという欲求が増加しているということです。つまり、供給者にとって、のどから手が出るほど欲しい、需要がそこにある!ということです。薬小売業界の中で、ドラッグストアという「価格訴求」のディスカウント業態が飽和状態を迎える中で、「価値訴求」の業態が、消費者の潜在的欲求にもなっているということは、自社の爆発的業績向上の千載一遇のチャンスであるということを意味しますが、どうやら、ほとんどの人が気付いていないか、実行する力がないかのどちらかのようです。

 「長所伸展」から話がそれてしまったようですが、大手中の大手である「マツモトキヨシ」の「価格訴求」の土俵に対して、中小ドラッグストアや、中小薬局が打てる対抗策は、中小にしか出来ない、つまり、大手中の大手には出来ない「顧客密着」などによる「価値訴求」しかないはずです。船井幸雄流に言えば、「完全個別対応」です。こんなこと、大手中の大手に勤める「サラリーマン根性剥き出しの店員」に出来ますか?1年おきに転勤を繰り返したり、例え業績が悪化しても、来月の給与は必ず支給されると信じて疑わない大手中の大手のサラリーマン店員に、例えば、300人の顧客の顔と名前はもちろんのこと、薬に限らず、健康に関するすべての情報(栄養、運動、休養)を把握したうえで、健康のプロとしてのアドバイスを行うことが出来ますか?顧客は、価格が安いということにも、確かに価値を感じますが、自分の健康のことを、下手をすると家族よりも、よく知っていて、しかも、健康のプロとしての専門的なアドバイスをしてくれるということにも価値を感じます。つまり、お金を払ってくれます。これこそが、中小の「長所伸展」という戦略の具体的方法であり、生き残りの秘訣です。

 自分や、自社の長所を取り、短所を捨て、つまり、取捨選択し、長所という名の強みに集中し、成長し、世の中に対して貢献してくという一連の流れが、「長所伸展」の本質であると、私は理解しています。



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