週刊「儲け創り」通信

〜創刊79号 2005年2月27日〜

発信人 株式会社 船井総合研究所 第六経営支援部 

チーフ 経営コンサルタント(儲け創り人)望月 隆之


この週刊「儲け創り」通信は、船井総合研究所の望月隆之が、経営者、ならびに経営幹部の皆様に、【高い顧客価値&満足
(の創造)⇒高い粗利益(の創造)⇒高い社員価値&満足(の創造)】⇒高い企業価値&満足(の創造)⇒高い投資家価値&満足(の創造)という「善循環」をまわし続けるためのヒント・コツ・秘訣・勘所・ポイント・要点・本をお伝えしていくものです。

  


今週の「儲け創り」のヒント

 

「経営ミドル(幹部)と経営ボトム(一般社員)の差 その1

「抽象を具体に翻訳する能力」

 

 経営ミドルと経営ボトムの差は、どこにあるのか?それは、「抽象的な経営理念や経営戦略を、まず自分自身がより具体的に理解し、具体的な戦術として現場に落とし込み、しかも、経営ボトムを動かすことが出来る「具体的な言葉」で語ることが出来るかという点」にあります。もちろん、経営ミドルと経営ボトムの差を語るときには様々な基準がありますが、私は、これが、最も重要なポイントであると考えております。もちろん、経営トップは、具体化されたときのイメージを前提に抽象を語らなくてはなりませんが、その経営トップの指示を受けて、「現場の経営ボトムが理解できるレベルまで、より具体化する」のが、経営ミドルの最も大切な職務のひとつです。ですから、「抽象を具体に翻訳する能力」が身に付き始めたら、経営ミドルになる資格が出来てきた証拠であり、経営者は、その経営ボトムを経営ミドルに登用することを検討し始めていいと思います。逆に、経営ミドルに登用されたければ、そういう(抽象を具体に翻訳する)能力を身に付けることが、極めて大切になります。それが出来なければ、経営ミドルになれないといっても過言ではないでしょう。経営者の方には、経営ミドルを登用する際の基準のひとつとしてお聞きいただきたいですし、経営ボトムの方には、何が出来るようになれば経営ミドルになれるのかという基準のひとつとしてお聞き頂きたいと思います。

  


自律とは、

「自ら問題を発見し、問題を解決する能力のこと」

 

つまり、現在最も求められる人「財」である、「自律社員」とは、自ら問題を発見し、問題を解決する能力を持っている人のことを指します。つまり、経営を行っていく上で起こる様々な問題を自ら発見できない社員は、とても、「自律」しているとは言えないし、したがって、経営ミドルにはなれないし、出来れば、ボトム社員としてだって、採用したくないというのが経営者の本音でしょう。市場がますます細分化し、つまり、消費者の欲望の形態が増えた現在において、需要を満たす供給を行うには、「臨機応変」が可能な社員の存在が必要不可欠です。つまり、基本が徹底されていて、その上で、応用が可能な社員を市場が求めている以上、経営者として、自社の業績を向上させるには、人「財」育成が、最も重要であると明確に認識し、実践することが重要です。そのような基本的な認識の上で、初めて、人「財」育成のノウハウが活きてきます。

ところで、今、私が「自律(&他律)」と表現していることを、別の言葉で、しかも的確にわかりやすく表現されている経営者の方がいらっしゃいます。「俺が、つくる!(中経出版)」で有名な岡野工業株式会社の岡野雅行氏です。岡野氏は、「頭のいい奴」よりも「利口な奴」になれという言葉で表現されています。岡野氏によれば、「頭のいい奴とは、いわゆる勉強の出来る奴」で、「教科書や参考書を必死に暗記すれば東大に入れるような頭脳の持ち主のこと」を指します。それに対して、「利口な奴とは、自分が生まれ育ってから現在までに蓄積したものを、臨機応変に引っ張り出して使うことが出来る奴のこと」を指します。望月的に言えば、「知識を知恵に変える能力」があるということでしょう。そういう言い方で言えば、「頭のいい奴とは、知識は豊富に持っているが、問題を発見し、問題を解決する知恵に変えることが出来ない奴」のことでしょう。では、そのような「利口な奴」を育成するには、どうすればよいのでしょうか?岡野氏は続けます。「でも、この才能はいくら勉強しても身につかないよ。生活環境の中で揉まれてこないとダメなんだ。今みたいに親が何でも手を出して育てると、人の気持ちがわからない、自分から自発的に行動が起せない人間になっちゃう。」と。

岡野氏の考えが正しいとすれば、人「財」育成が、自社の業績向上のポイントであると認識し、実践しようとしている経営者にとっては、まず@「利口な奴=自律社員」を採用するように努力することがポイントになってきます。「知識を組み合わせて知恵に変える力の有無、強弱、問題を発見し、問題を解決する力の有無や強弱」を見抜くように努力するということです。間違っても学歴なんかで判断してはいけないということです。その上で、A既に入社している社員を育成し、人「財」に変えるには、「生活環境で揉まれると利口な奴になれる」わけですから、「業務環境で揉めば、利口な奴、自律社員になれる」可能性がでてくると言うことになります。では、業務環境において「揉む」とはどういうことかと申しますと、経営トップ、経営ミドル側が、他律社員の経営ボトムに対して、社員自身が、自ら考え、知識を知恵に変えるまで、不退転の決意と姿勢で、「迫る!」ことです。「迫る!」ことで、社員を「背水の陣」に追い込むしかないのです。そのような「業務環境」が、「知識を知恵に変える」=自律能力を身に付けさせるのです。辛抱強く、粘り強く、自ら考えることが習慣となるまで、テマヒマをかけることしかありません。とてもテマヒマのかかることですから、ある程度は、経営ミドル候補として絞り込んだ社員に対して行うことになるのが、現実的でしょう。また、経営トップ、経営ミドル側がしびれを切らして、答えを教えてしまう場合も、現実には多いようです。しかし、これは、「親が何でも手を出して育てると、子が利口にならない」と言う岡野氏の指摘通りの結果となってしまいます。経営ミドル候補として絞り込んだ社員に対して、粘り強く、辛抱強く、不退転の決意、姿勢で「迫る」ことによってしか、将来の経営ミドルは育ちません。将来の経営ミドル候補社員と決めた社員に対しては、その該当社員との対話や、会議などのすべてのコミュニケーションの場面において、粘り強く、辛抱強く、「知恵を出させる」ように仕向けましょう。「自分の知恵を出させる」ように仕向けましょう。



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