週刊「儲け創り」通信

〜創刊82号&83号 2005年3月20日&27日〜

発信人 株式会社 船井総合研究所 第六経営支援部 

チーフ 経営コンサルタント(儲け創り人)望月 隆之


この週刊「儲け創り」通信は、船井総合研究所の望月隆之が、経営者、ならびに経営幹部の皆様に【高い顧客価値&満足
(の創造)⇒高い粗利益(の創造)⇒高い社員価値&満足(の創造)】⇒高い企業価値&満足(の創造)⇒高い投資家価値&満足(の創造)という「善循環」をまわし続けるためのヒント・コツ・秘訣・勘所・ポイント・要点・本質をお伝えしていくものです。

 

  


今週の「儲け創り」のヒント

 

経営とは、

社員のモチベーションをアップさせることです。

つまり、経営者にとって、最も大切な仕事のふたつのうちのひとつは、

「社員のモチベーションアップ」です。

(ちなみに、もうひとつは、「利益を創る仕組みを考えること」です。

つまり、マーケティング(市場を創ること)とオーガナイゼーション(組織を創ること)が、経営の真髄です。)

 

 経営とは、(顧客の満足を提供した結果として)利益を創ることです。厳密に言えば、利益を創り続けることです。コスト(原価&経費)とパフォーマンス(売上)の間に、利益があるわけですから、利益を創り続けることとは、ローコストオペレーションとハイパフォーマンスオペレーションを追求し続けることとも言えます。また、コストとパフォーマンスのバランス=生産性を向上し続けることでもあります。絶対値(量)としてのコストダウン及びパフォーマンスアップ、そして、相対値(質)としての生産性の向上が、経営の真髄です。

  


 ですから、最大のコストには、最大のパフォーマンスを産み出させなくてはなりません。最大のコストとは、申し上げるまでもなく、人件費です。製造業、卸売業、小売業、飲食業、サービス業等、業種や業界等によっても、人件費の比率は様々ですが、最大のコストであることは、共通しています。そうであれば、その最大のコストに最大のパフォーマンスをして頂かなくてはなりません。最大のパフォーマンスを産み出させなくてはならないのです。その生産性=労働生産性を向上させることこそ、経営における最重要課題といっても過言ではありません。そして、人件費というコストから最大のパフォーマンスを導き出すのは、間違いなく、「社員のモチベーションアップ」です。ですから、経営とは、「社員のモチベーションアップ」なのです。「社員のモチベーションアップ」なくして、生産性の向上はなく、最大のコストである人件費の生産性の向上なくして、利益の増加はないのです。ですから、「社員のモチベーションアップ」を考えない経営者は、「利益の増加」を考えない経営者と言っても過言ではないでしょう。つまり、「社員のモチベーションアップ」を考えない経営者は、「利益の増加」を考えない経営者であり、そのような経営者は、もはや経営者とは呼べない、つまり経営者失格ということです。そういう意味において、経営者失格の経営者(らしきもの)は、現実には、残念ながら、非常に多く存在しているのも事実です。車の両輪と同じように、経営においては、マーケティングとオーガナイゼーションが両輪ですが、片方の「マーケティング(市場創り)=利益を創る仕組みを考えること」がうまくいっている場合は、オーガナイゼーションに関する施策が非常にまずい場合でも、業績は、かろうじて黒字は維持できます。(私がかつて在籍していた東急ハンズは、この典型的な事例です。マーケティングは、非常に優れたモノを持っていますが、オーガナイゼーションは、ゼロどころか、マイナスです。粗利益率50%超にも関わらず、営業利益率3%弱という結果が、それを象徴しています。マーケティング面での優秀さから見れば、2005年現在、年商3000億、営業利益300億の企業であってもおかしくないのですが、未だに、年商1000億、営業利益30億弱というレベルにとどまっているのは、すべてオーガナイゼーションのレベルの低さによるものです。経営者は、いったい何をやっているのでしょうか?「お金をドブに捨てるのがうまい(=死にコスト使い)」経営者のことを、いったいどのように表現すればよいのでしょうか?経営の両輪のうちのひとつが、「社員のモチベーションアップ」であることを知っていてやらないのではないでしょうから、知らないのでしょうねえ。知らなければ出来ませんから。つまり、経営を知らない人間が経営者をやっているということでしょうか?東急ハンズを今でも愛している私からすれば、非常に残念なことです。)

しかし、もちろん、車の両輪ですから、マーケティングとオーガナイゼーションの両方ともにレベルアップさせることで、さらに利益を増加させたいものです。ちなみに、車の例えで言いますと、車の両輪が大切なのは、もちろんですが、最も大切なのは、その車を運転している運転手=経営者であることは、申し上げるまでもないことでしょう。船井幸雄最高顧問曰く「企業は、経営者で99.9%決まる。」と言うことです。

 では、「社員のモチベーションアップ」についての具体的な施策に入る前に、最も重要なキーワードをお伝えしておきます。「納得(感)」です。どんなに精緻な人事制度、評価制度であっても、肝心要の「社員=人間(のココロ)」が、「納得(感)」を持てないものは、効果を発揮しません。(実は、オーガナイゼーション(組織創り)だけではなく、マーケティング(市場創り)においても、「納得(感)」が非常に重要なキーワードです。売上の源泉である顧客満足は、まず、「顧客=人間(のココロ)」の納得(感)がなければ、始まりませんから。つまり、経営とは、「人間(のココロ)の研究」ということですね。)では、「納得(感)」は、どのように創るのかということになります。「納得(感)」は、経営(者)と社員との誠意のある対話=コミュニケーションからしか創られません。その誠意のある対話の中で、きちんとした経営に関する理念などを語ることが大切なのです。ポイントは、丁寧な説明、理解しやすい説明です。そして、そのような基本的な信頼関係の上で、人事制度、評価制度を構築していくことが必要です。間違っても人事部や、総務部に任せっぱなしにしてはいけません。彼らに丸投げすると、ほとんどの場合、肝心要の「納得(感)」を忘れて、人事制度のための人事制度、評価制度のための評価制度(手段の目的化)を創るからです。しかも、テマヒマかけて、非常に精緻なものを創ってきます。精緻なモノ自体に価値があるわけでも、ないわけでもありません。「納得(感)」の上に精緻な仕組みがあれば、効果的だし、そうでなければ、効果的でないということです。つまり、経営者として、人事部や総務部に、任せるのはいいですが、任せっぱなしではまずいのです。成果主義という評価精度の導入をキッカケに業績を悪化させた富士通の事例は、まさに、このケースです。成果主義がいけないのではなく、人事部に丸投げした経営者、そして、丸投げされたことをいいことに、「形式」だけをテマヒマかけて創り、肝心要の「実態」=「納得(感)」=「魂」創りにテマヒマをかけなかったことがいけないのです。繰り返しになりますが、「社員のモチベーションアップ」の具体的な施策におけるキーワードは、「納得(感)」です。

 上記が、経営の真髄に対する望月の考えですが、日経ビジネス(2005年3月14日号)にまさに「我が意を得たり!」の記事が掲載されました。「納得出来る賃金(連続増益153社に学ぶ真の成果主義)」という特集です。

 記事によれば、「@企業が生み出した付加価値の配分における人件費・労務費の割合で、東証1、2部上場企業の平均が62%であるのに対して、増益企業153社の平均は、(なんと!)45%」であり、「A従業員一人あたりの人件費は、増益企業のほうが5%も上回っていない。」とのことです。つまり、平成の勝ち組企業である増益企業153社は、「人件費は低く、給与は(少し)高く。」となっているということです。つまり、「少数精鋭化=労働生産性の向上」に成功しているということです。(この結果は、平成の勝ち組企業の社員が、カネも大切だが、カネだけでは働いていないということも意味していると思います。「カネで買えないものはない。カネがすべて。愛だってカネで買える。」と豪語しているホリエモンに教えてやりたいところです。ちなみに「カネがすべて」と言うような発言ひとつとってみても、彼が経営者ではなく、企業の売り買いで利ざやを稼ぐだけの単なる「優秀な」個人投資家であることを象徴していますね。あのような人物が経営トップである企業で働いている社員のココロが知れません。私なら、死んでも嫌ですね。お金はとても大切ですが、すべてではないですから。)

それでは、そのような平成の勝ち組企業における賃金に関するキーワードは何かと言えば、詳しくは、日経ビジネスをお買い上げ(!)頂き、読んで頂きたいのですが、「賃金制度の成否は、結局のところ、労使がともに納得しているかどうかで決まる。(日本経済団体連合会の田中恒行・労政・企画グループ長)」と言うことです。つまり、賃金制度においては、テマヒマかけた社員との対話の積み重ねやツールとしての成果主義という仕組みによって、「納得(感)」を創り出したところが、平成の勝ち組企業になっているということです。まさに「形を創って、魂を入れる」ことが大切だということです。(富士通の失敗は、成果主義の失敗ではなく、「魂を入れる=テマヒマかけた社員との対話の積み重ね」という肝心要の部分において、手抜きをしたから失敗をしたということです。実は、これは、「形だけを創って魂を入れない」で失敗をするという日本の大企業の典型的な失敗のパターンです。)


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