週刊「儲け創り」通信

〜創刊85号 2005年4月10日〜

発信人 株式会社 船井総合研究所 第六経営支援部 

チーフ 経営コンサルタント(儲け創り人)望月 隆之


この週刊「儲け創り」通信は、船井総合研究所の望月隆之が、経営者、ならびに経営幹部の皆様に、【高い顧客価値&満足
(の創造)⇒高い粗利益(の創造)⇒高い社員価値&満足(の創造)】⇒高い企業価値&満足(の創造)⇒高い投資家価値&満足(の創造)という「善循環」をまわし続けるためのヒント・コツ・秘訣・勘所・ポイント・要点・本質をお伝えしていくものです。

 


今週の「儲け創り」のヒント

 

「赤字社員(部署)、黒字社員(部署)

を明確にすることが、人「財」育成のはじめの一歩

(モチベーションアップのはじめの一歩)

管理会計が、人「財」を育成する

「管理会計のススメ」

 

企業の発展プロセス「伸ばす→整える→伸ばす」のなかで、

はじめての「整える」の時期

(例えば、年間売上10億、粗利益4億、人件費2億、社員数30名を超えた頃)

に、是非、やっておきたいこと

 

「人件費は安く、給与は高く」

つまり、労働生産性が高い、

つまり、少数精鋭化が進んでいることが、

今、業績好調企業の共通点

少数精鋭化の手段としての管理会計

 

 

 

企業の人「財」育成における人「財」とは、「経営者(=プロフェッショナル)」のことであり、つまり、人「財」育成とは、「経営者(=プロフェッショナル)を創る」ということです。

一方、経営者の第一の使命は、利益を創ることです。

だから、人「財」育成は、部署単位、個人単位の損益を明確にすること、つまり、「赤字社員(部署)、黒字社員(部署)」を明確にすることから、そのすべてが始まります。

 

 「私は、経営者なので、公認会計士や税理士になるわけではないから、経理や財務のことなどは、専門家に任せておけばよい。」と、一見、正しそうなことを言い切って、実は、自らの「どんぶり勘定」「丸投げ体質」を正当化し、全く、経理や財務などのいわゆる「管理(=営業支援)部門」に興味を持とうとしない、経営者とお話をする機会がありました。しかも、その経営者は、「株式公開」を目指すということです。確かに、経営者は、公認会計士や税理士になるわけではないですが、いわゆる「管理(=営業支援)部門」に関する基本的なこと、経営に関わる本質的なことは、最低限、押さえておかないと経営にはなりません。経営者にとって、第一の使命は、パフォーマンス(=売上・目的)に効率よく結びつくと思われるコスト(=原価、経費・手段)の使い方を考え、選び、(=仮説構築)、実行し、なるべく当初の仮説通り、もしくは、それ以上の成果(=利益)を上げることにあるわけですから、経理や財務などの管理(=営業支援)部門に関する基本的な知識、経営に関わる本質的なことへの興味を持って頂かないと話になりません。その話にならない方が、「株式公開」を目指すと言うのですから???確かに、「営業マン上がり」、つまり、ほとんどの創業経営者は、いわゆる「管理(=営業支援)部門」を軽視する傾向があります。しかし、例えば、組織が大きくなり、経営トップ一人だけの目が行き届きにくくなる社員数50名くらいを超えた頃から、考えを進化させていきます。進化しなくては、企業の規模と品質が、それまで以上に良くならない、つまり、経営者の器以上に大きくならない(=経営者のレベルの低さがボトルネック!な)わけですから、「止むを得ずの状況」に追い込まれて、進化するわけです(経営者の進化に限らず、進化とは、すべてそう言うものでしょうが)。必要以上に「管理(=営業支援)部門」を軽視せず、というより、経営トップとして、きちんと勉強をして、その本質を把握した上で、専門家に任せると言う考えに進化していくのです。「株式公開」と言う機会を通して、進化する場合も多いようです。先日、お話した経営者の方も、是非!進化して欲しいものですが・・・・

 話を元に戻しますと、経営者と社員の違いの中で重要なことのひとつに、「損益を明確にすること、赤字を出さないこと、黒字を創ること、つまり、儲けを創ることに対する責任の大きさ」と言うことがあることは、議論の余地がないでしょう。当然、全社の損益は、最終的に、経営トップが責任を負います。だから、経営トップの指示、判断が、最終的に影響力を持ちます。では、部署単位、社員単位では、どうなっているでしょうか?明確になっていない企業が多いのではないでしょうか?また、明確にしている場合でも、営業部署単位、営業社員単位に留まっている場合も多いようです。経営の評価が、最終的には、その業績=損益における黒字=儲けにあるにも関わらず、部署単位、社員単位では、その損益を明確にしないで、社員を経営者(=プロフェッショナル)に育成することは可能でしょうか?コストパフォーマンス(=儲け)創りに鈍感な経営者は、経営者とは呼べないように、人「財」育成において、損益を明確にしないというのであれば、人「財」は育ちません。逆に言えば、損益を明確にすることから、経営者(=プロフェッショナル)に近づく、つまり、人「財」に近づくことが始まるのではないでしょうか?「損益に関する責任」を自覚することが、はじめの一歩になるということです。「自律」と言う言葉も、「経営者(=プロフェッショナル)」と同義語として、私は、よく使いますが、この「自律」にしても、「結果として儲けを創ることに対して自らを律していく」と言うことに他ならないわけです。先日の「儲け創り」通信でも申し上げたように、「人件費は安く、給与は高く」つまり、労働生産性が高い、つまり、少数精鋭化が進んでいることが、今、業績好調企業の共通点ですから、まさに「自律」社員を育成することが、企業の業績向上に直結していると言っても過言ではありません。そして、その「自律」社員=人「財」を育成するはじめの一歩が、社員別、部署別に損益を明確にすること、つまり、損益に対する責任を自覚させること、管理会計を導入するということになります。

 管理会計を導入することのメリットは、ここまで書いたことでご理解いただけたかと思いますが、デメリットもあります。目的は、あくまで労働生産性を上げることなのですが、その目的との関係で、必要以上に厳密に、実行段階において、実行すると、管理会計という手段自体が目的となり、むしろ、労働生産性を下げる可能性があるということです。管理会計に限らず、経営に関する施策を実行する場合、例えば、成果主義という評価制度の導入についても同様ですが、常に手段の目的化という危険性があるので注意したいところです。このところ評判の悪い成果主義ですが、失敗している企業のほとんどすべてに共通する理由は、成果主義自体が間違っているのではなく、その導入自体を目的としてしまい、その本質を理解することなく、表面的なノウハウだけを導入するという単なる「サルマネ」であったからというものです。表面的なノウハウだけを導入するという単なる「サルマネ」で成功できないのは、敢えて申し上げるまでもないことです。しかし、表面的なノウハウだけを導入するという単なる「サルマネ」は、日本の企業が得意なことのひとつですので、気をつけたいところです。我々経営コンサルタントに対して、単なるサルマネをさせろという経営者も、残念ながら少なくありませんが、ノウハウの深層にあるコンセプト=本質への理解なくして、成功できるほど、経営は簡単ではありません。そんな安易な経営で成功できるはずがないのですが・・・安易な経営者が多いのも事実です、残念ながら・・・

 管理会計の導入に関しては、直接部門である営業部門については、パフォーマンスがわかりやすいので、そのコストパフォーマンスを明確にしやすいのです。しかし、間接部門である管理(=営業支援)部門については、パフォーマンスがわかりにくいので、そのコストパフォーマンスを明確にしにくいので困っているという声も良く聞きます。しかし、目的は、あくまで、労働生産性の向上です。もちろん、あまりにどんぶり勘定で、社員の納得性が低いのでは意味がありませんが、データの厳密性にこだわって、導入を遅らせているというも問題です。

間接部門に対する管理会計の導入を遅らせている原因は、そのパフォーマンス、つまり、売上に対する貢献度が明確に出せないからです。例えば、100万の売上に対して、間接部門の貢献度を何万にすればよいのかが明確にしにくいということです。直接部門と間接部門の比率については、業界によっても、ビジネスモデルによっても、企業によっても違うので、一般論で語ることは不可能です。そこで、例えば、まず、間接部門の社員別の目標を年収の5倍の売上貢献ポイントとします。次に、その目標に対して、ある一定の比率(例 直接部門70% 間接部門30%=売上貢献ポイントの評価配分比率)と個別社員の業務評価によって配分された売上貢献ポイントの実績との差異を明確にします。その上で、労働生産性の向上(≒業務改革)に関するマネジメントを行うことが出来ます。例えば、年収800万の社員は、4000万売上貢献ポイントを稼ぐことが目標の目安になります。年間の労働時間を2000時間とすれば、1時間あたり2万円の売上貢献ポイント稼がなくてはいけません。その目安がわかるだけでも、例えば、無駄な打ち合わせをしているヒマはなくなります。全社員が、同じような意識になれば、全社的に無駄な打ち合わせがなくなります。極端に言えば、経営トップと社員との打ち合わせにおいても、1時間あたり2万円を創り出すものでなければ、いくら経営トップの指示でも、社員は嫌がるようになります。極端な例ですが、時間コスト意識が、ここまで徹底されれば、組織の質は、非常に高いものと言えるでしょう。

しかし、いずれにしても、個別の企業の経営トップの意思が反映されたものにするしかありません。つまり、100万の売上を創る時に、他社との関係、顧客との関係で、我が社の売上貢献ポイントの評価配分比率は、例えば、直接部門は80%、間接部門は20%と決めるしかないでしょう。自社の売上創造に関する戦略を反映させたものにするべきでしょう。もちろん、現場の社員の納得度が高いものにしなければなりませんし、戦略を数値化するのは難しいことなので、何回かシミュレーションを重ねて、比較的納得度が高いと思われるものが出来た時に、全社員に公開し、労働生産性の向上≒業務改革の推進の最高のモチベーションとするべきでしょう。戦国時代、織田信長が、桶狭間の戦いに勝利した後の評価において、1番首をとった人を最高に評価するという当時の常識に対して、敵将・今川義元の動向をいち早くもたらした人を最高に評価したことに、その後の成功の大きな原因の一つがあると、私は、考えています。そうすると、100万の売上を創った時に、どの部署を、どの社員を、どのような比率で評価するのかは、社員のモチベーションに大きな影響を与え、利益の源泉である社員のモチベーションに大きな影響を与えるこの「評価配分比率」は、極めて重要な経営判断であると言わざるを得ないと思います。これは、経営における「組織化(=オーガナイゼーション)における最重要課題です。

 

 

 

 

 


売上1000万

 

間接部門300万

間接部門社員数 10名

間接部門社員の業務評価はすべて同じだとすると

1人当り売上貢献ポイント 30万

 

直接部門700万

間接部門社員数 20名

直接部門社員の業務評価はすべて同じだとすると

1人当り売上貢献ポイント 35万

 

それぞれが、それぞれの欲しい年収もしくは、頂いている年収などに基づいた売上貢献目標ポイントを達成させることが目標となります。



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