週刊「儲け創り」通信

〜創刊87号&88号 2005年4月24日&5月1日〜

発信人 株式会社 船井総合研究所 第六経営支援部 

チーフ 経営コンサルタント(儲け創り人)望月 隆之

この週刊「儲け創り」通信は、船井総合研究所の望月隆之が、経営者、ならびに経営幹部の皆様に、【高い顧客価値&満足(の創造)⇒高い粗利益(の創造)⇒高い社員価値&満足(の創造)】⇒高い企業価値&満足(の創造)⇒高い投資家価値&満足(の創造)という「善循環」をまわし続けるためのヒント・コツ・秘訣・勘所・ポイント・要点・本質をお伝えしていくものです。

 


今週の「儲け創り」のヒント

 

「日本人の問題、経営者の問題」

〜JR福知山線の脱線事故から学ぶ〜

 

日本人の問題:

@「利益目的」嫌悪&「形式だけ主義」

A「完璧主義」からの脱却

経営者の問題:

「営利目的と安全確保の両立」と言う本物の経営(者)不在がもたらす不幸

   


 あの忌まわしい事故から1週間。漸く、事故の直接的な原因、間接的な原因が明らかになりつつあるようです。直接的な原因の主たる部分は、「スピード超過」のようですが、問題は、間接的な原因の主たる部分です。JR西日本という株式会社が、株式会社の本性(?)である営利目的(!)を剥き出しにして、安全を軽視した結果が、今回の事故の間接的な原因の主たる部分であるかのような報道の論調が、どうも、目立ちます。「営利目的(の株式会社)=安全軽視」という考え方が前提の論調です。今回の事故のように、公共機関の重責をになう民間会社、株式会社が事故を起した時には、必ず、「営利目的(の株式会社)=安全軽視」という論調が目立つのですが、このような記事を書く記者のほとんどが、株式会社の実際をほとんど知らない(?)社会系の記者が書くから、そのような論調になってしまうのでしょうが、それにしても、ひどすぎます。株式会社の実際を知らない記者もひどいですが、その無知な記者の書いた記事を、当然のごとく受け入れてしまう日本人もひどすぎると思います。

 営利目的の株式会社という組織形式がすべていけないと言うのであれば、場合によっては、凶器にもなりうる自動車を製造販売し、年間純利益1兆円超のあのトヨタ自動車は、株式会社ではないのでしょうか?それとも、安全軽視の自動車ばかりを作っている極悪会社なのでしょうか?1兆円超の年間純利益は、安全軽視をし続けて創ったものなのでしょうか?申し上げるまでもなく、そんなことはありません。もちろん、トヨタ自動車だって「人間の集団」ですから、完璧ではありません。自動車のリコールだってします。しかし、リコールを起した時に、営利目的の株式会社であることを間接的な原因とすることはないでしょう。同じ営利目的の株式会社の自動車会社である三菱自動車の事例と、トヨタ自動車の事例の違いを見れば明らかなように、問題は、経営トップのレベルにあることは申し上げるまでもないでしょう。経営トップにCSR(企業の社会的責任)に意識があるかないかの違いでしょう。短期的利益だけでなく、長期的利益も視野に入っているか、いないかの違いでしょう。今回の事件の間接的な原因の主たる部分は、利益目的の株式会社と言う組織形式がいけないのでなく、「利益目的と安全確保の両立と言う本物の経営」を行えなかったJR西日本の経営トップのレベルの低さが問題なのです。経営トップの問題は、後述しますが、そのようにおかしな議論が、今回のこの事故の間接的な原因を特定するプロセスにおいて行われているのです。

このように、日本人には、「営利」を嫌悪する姿勢(未だに残る士農工商的な考え方)の問題があります。「営利目的の組織形式=悪」、「非営利目的の組織形式=善」とう単純な図式です。このような議論をする時に忘れ去られているのが、数々の官僚の悪行です。日本道路公団の職員の税金の私物化や、NHKの不祥事は、一体どこへいったのでしょうか?もちろん、民間だから万能であると言うわけでもありません。つまり、目的別の組織形式において、完璧な組織形式などないと言うことではないでしょうか。「最大多数の最大幸福」の実現手段のひとつである組織形式として、「営利を目的とした株式会社」が、他の組織形式との比較において、「使える度合いが高い」というだけ。それ以上でもなければ、それ以下でもない。誰か優秀な人が、それ以上の組織形式を考えてくれれば、それを手段=道具として使うだけ。それ以上のものがない現在において、安易に「営利目的の株式会社」を批判するのは、いかがなものでしょう。批判のために批判すると言う不毛な議論は、止めにしたいものです。今、目の前に生きる人たちの幸福を実現し、そして、将来に生きる人たちの幸福を実現する手段としての組織形式において、現在、最善なのが、株式会社であるということです。それ以上でもなければ、それ以下でもありません。組織形式についても、もちろん、今後、研究の余地はありますが、今、目の前にある問題を解決することが先決です。そのためには、ポイントは、形式にあるのではなく、それを使う人間の側の意識の問題と言うことでしょう。ということは、その人間の意識や、それに基づく運用・行動をチェックする仕組みが不在であることの問題を議論しなくてはいけないでしょう。組織形式の議論をするのであれば、そこを問題にするべきでしょう。つまり、ポイントは、「組織の透明性の確保」です。透明性が確保されている組織は、間違いなく、「営利目的と安全確保の両立」のために最善を尽くそうとします。組織形式の問題のポイントは、「透明性の確保」になります。そのような組織形式の問題でなければ、経営トップの意識のレベルの問題です。

 

もうひとつの日本人の問題は、「欠陥はあってはならない(=完璧主義)」と言う前提の存在です。「欠陥が生じるのは避けられない」を前提に考えれば、部分の欠陥を、全体の欠陥=大きな事故にしないためにどうすればよいのかと言う具体策を考えていくことになります。しかし、「欠陥はあってはならない」と言う前提であれば、単なる精神論で終わってしまい、何らかの具体策が生まれる土壌は創れません。今回の事故は、「欠陥はあってはならない」と言う強すぎる意識が、結果として、大きな事故を招いてしまったものではないでしょうか?運転手や車掌のミスも重大ですが、1人の運転手、1人の車掌のミスが、これだけの大きな事故に結びついてしまう仕組みのほうが、より責任が重大ではないでしょうか?「欠陥が生じるのは避けられない」と言う前提で考えていれば、何らかの具体策が実施され、今回のような大きな事故は防げたのかもしれません。そして、このような「欠陥はあってはならない(=完璧主義)」の思考回路は、JR西日本にだけ特有のものではなく、原子力発電所の問題や、牛肉のBSE問題でも同様に見られ、日本人特有の思考回路のひとつなようです。

 

形式とそれを支える意識の問題、これを企業の問題で言えば、大切なのは、株式会社という形式ではなく、それを運用・行動する経営トップの意識の問題であり、その意識&行動・運用をチェックする仕組みの問題ではないでしょうか。「営利目的と安全確保の両立(=本物の経営)」と言う重責を担うに足りる経営トップなのかどうか。その意識を持っていたとしても、その具体策は、適切なのかどうか?「信賞必罰」は正しいが、それさえも手段のひとつであって、ポイントは、あくまでも、「営利目的と安全確保の両立」と言う目的のための手段として、「信賞必罰」が行われているかどうかです。そのあたりを、経営トップに対して、経営の運用面でチェックするのが、例えば、(株主の代表としての)社外取締役であり、(社員の代表としての)労働組合です。もちろん、顧客もステークホルダーの1人として、経営トップをチェックします。JR西日本のステークホルダー、監査役、社外取締役、株主、社員、労働組合、顧客は、経営トップを充分に監督してきたのでしょうか?この問題も徹底的に議論すべきですね。そうでないと、株式会社になった意味がありませんから。

 

今回の事故の問題で、間接的な原因の主たる部分は、「利益を追求するあまり、安全を軽視した」と言うことではないでしょう。JR西日本の経営トップは、そこまでレベルの低い経営トップではないと思います。「営利目的と安全確保の両立(=本物の経営)を目指したが、安全の確保において、その具体策(日勤教育に象徴される現場の労務管理)が、あまりに前時代的で、しかも、罰すると言うひとつの手段が、自己目的化してしまい、結果として、「安全を確保するために、手段としてどのようなことを行えばよいか」と言う具体策の欠如を招いたことがポイントではないでしょうか?日勤教育などは、「単なるいじめ」でしょう。あんなことだけで安全が確保できるはずがないのです。「最新の人と組織のマネジメント」を勉強し、「人心」を知れば、そんなことは、すぐにわかることです。しかし、当然ですが、JR西日本の経営トップは、本気で、あの日勤教育で安全が確保できると思っていたのでしょう。おそらく、JR西日本の経営トップをはじめとする幹部は、誰一人として、最新のマネジメント、特に「人と組織のマネジメント」を勉強していないのではないでしょうか?少しでも勉強していたら、あのような日勤教育などというもののおかしさに気付くはずですから。経営コンサルタントでも雇って、少し、勉強したほうが良さそうですね(笑)。過去の経験則だけで対応するのではなく。間違いなく「経営習慣病」のようですから。我が社がコンサルティングすれば、社員のモチベーションアップを通じて、間違いなく、「利益追求と安全確保の両立」が実現できます。その両立こそが、経営ですから・・・宣伝です(笑)!



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