週刊「儲け創り」通信

〜創刊92号 2005年5月29日〜

発信人 株式会社 船井総合研究所 第六経営支援部 

チーフ 経営コンサルタント(儲け創り人)望月 隆之


この週刊「儲け創り」通信は、船井総合研究所の望月隆之が、経営者、ならびに経営幹部の皆様に、【高い顧客価値&満足
(の創造)⇒高い粗利益(の創造)⇒高い社員価値&満足(の創造)】⇒高い企業価値&満足(の創造)⇒高い投資家価値&満足(の創造)という「善循環」をまわし続けるためのヒント・コツ・秘訣・勘所・ポイント・要点・本質をお伝えしていくものです。

 


今週の「儲け創り」のヒント

 

「売価−原価=利益」

 

しかし、原価と売価は連動しません。

売価は、顧客価値に対して連動します。

原価は、スケールメリットに対して連動します。

 

つまり、経営とは、

@売価が高くてもお買い上げいただくには何をすればよいのかという

顧客価値を創ること&伝えること(=マーケティング)と、

A売価が高くてもお買い上げいただくには何をすればよいのかを、

常に考え続ける

社員創り(=組織化・オーガナイゼーション)であり、

経営者の仕事は、

「@       顧客価値を創ること&伝えること

A社員創り」

このふたつだけ。

 企業の社会的な存在価値は、顧客に対して、顧客(にとっての)価値が高い商品やサービスを創造し、提供し続けることにあります。したがって、顧客価値が高ければ、売価も高く設定できるのです。

 


1945年の敗戦後から1970年代後半までのの日本においては、目に見えるもの中心の消費社会でしたから、スケールメリットを活かした原価、そして、それを反映させた売価が、唯一のビジネス成功の法則でした。価格訴求、わかりやすく言えば、「安ければ、売れる!」ビジネスモデルです。「量のニーズ」に対応するには、「ディスカウント・チェーンストア理論」。これこそが唯一絶対のビジネス成功の法則でした。しかし、消費の成熟化、顧客価値の多様化により、ビジネス成功の法則がもうひとつ出来ました。1970年代後半からの日本における、目に見えないもの中心の消費社会に対応する価値訴求「高くても、お買い上げ頂ける!」です。消費の成熟化、顧客価値の多様化とは、「質のニーズ」が、1970年代後半以降の日本において、高まってきたということです。「質のニーズ」に対応するビジネスが成立する土壌が、ここに出来てきたのです。2005年現在において、勢いのある企業は、すべて、この「質のニーズ」に対応している「プレミアム」企業ばかりといっても過言ではありません。単なる「ディスカウント」企業はひとつもないといっていいでしょう。つまり、2005年現在、ビジネス成功の法則は、「プレミアム化」なのです。その「プレミアム化」を行うために理解しなければいけないポイントのひとつが、売価設定における顧客価値との連動です。従来のような原価連動ではダメなのです。原価連動でしか考えられない経営者には、先週お話した「キットカット」の事例や、「FIREホワイトコーヒー」の事例は、全く理解できないでしょう。そして、「キットカット」や「FIREホワイトコーヒー」の成功事例の本質がわからない原価連動経営者には、2005年現在、ビジネスを成功させることは、絶対に出来ません。成功事例の本質は、「情報価値(=ココロ満足・価値)」だからです。それが理解できれば、例えば、売価−原価=(粗)利益の(粗)利益率が99%であったとしても、それは、「企業の知恵の結晶」であることが理解できるはずです。(粗)利益率99%は、決して、後ろめたいことではないのです。むしろ、誇らしいことです。原価(この場合は1%)に「高い価値(この場合は、99%)」を、付加して、顧客に、高くても、喜んで、お買い上げいただけたわけですから。むしろ、このことが理解できないようであれば、2005年現在、ビジネスをやる資格はないといっても過言ではないでしょう。業績の悪い会社のほとんどは、このようなビジネスをやる資格のない経営者が経営をしている場合です。未だに「安くすれば売れる!(=ディスカウント・チェーンストア理論)」と叫びながら、既存店ベースでは、30ヶ月近くも前年同月比の売上を落とし、ついに、前期は、経常利益ベースでもマイナスに陥っても、解任されることのない東証1部上場の某ホームセンターの経営者などは、その典型的な事例ですね。「安くすれば売れる!」といいながら、「原価を割っても(!)売れない!」のですから、まともな頭で考えれば、「消費者の変化→企業(=自社)も変化しなければならない(=チェーンストア理論からの卒業!)」となるはずですが、どうも、そうならないようです。不思議です。まあ、単なる経営手法のひとつであるチェーンストア理論を経営理念としている経営者ですから、つまり、経営手法と経営理念の違いさえ理解できないレベルの経営者ですから、この企業に未来はないですね。経営理念とは、時代を超えた普遍的価値の何を実現させるためにその企業が存在するのかを掲げるものであり、経営手法とは、その達成手段のひとつであり、時代が変われば変えるものですから。先の経営者のように、単なる経営手法のひとつを経営理念に掲げるということは、その経営手法が陳腐化したら、その企業は解散するということを宣言したことになりますね。ということは、そろそろ解散の時が近づいたようですから、社会から退場して欲しいものです。ダイエーのように???

  

 

「中高一貫校の体育祭に学ぶ」

社員教育のポイントと勝てる企業の戦略と組織の関係

 

 昨年に続き、中学2年になった長女の学校の体育祭に行ってきました。昨年に続き、企業経営に関するヒントをたくさん頂いたので、いくつかまとめてみます。

 

まず、体育祭開会式における礼拝の言葉です。キリスト教の学校なので体育祭でも礼拝があります。

 

フィリピの信徒への手紙 2章 3〜4節

同じ思いとなり、同じ愛を抱き、心を合わせ、思いを一つにして、私の喜びを満たしてください。何事も利己心や虚栄心からするのではなく、へりくだって、互いに相手を自分より優れたものと考え、めいめい自分のことだけでなく、他人のことにも注意を払いなさい。

 

このまま、そのままで経営理念、企業理念になりそうな内容です。特定の目的(体育祭では、自チームの勝利)を成し遂げるために、個人が集まり、集団となり、組織を創っていく。「何事も利己心や・・・・自分のことだけでなく、他人のことにも注意を払いなさい。」の一節は、組織創りの最大のポイントといっても過言ではないでしょう。「ビジョナリーカンパニーU」にも通じるところがあります。最近の日本においては、オウム真理教(狂?)の悪影響からか、宗教が、嫌悪の対象とまではいかないにしろ、あまり、いいイメージがないようですが、良い企業は、どこかしら宗教的な雰囲気があるものです。京セラや、松下電器、観音のキャノンなど。社会的な存在価値で言えば、宗教も企業も、重なる部分が大きいのではないでしょうか?また、そうあるべきであると思います。「短期的なお金儲けだけがすべて」であるという単純資本主義の立場に立つ「畜生経営者」が増えてきてしまっている現状がありますから、なおさら、宗教的な要素=企業理念・経営理念を大切にすべきだと思います。短期的なお金儲けも大切ですが、それ以上に長期的なお金儲けのほうが大切ですし、それ以上に、社会的、普遍的な価値を創り続けることのほうが大切です。お金は目的でなく手段ですから、大切なのは、そのお金を使って何をするかでしょう。

 

 

 

 この学校は、中高一貫校で、体育祭は、中学1年から高校3年まで6学年全員で行い、しかも、学年別にチームを組んで、勝利を目指します。ですから、当然のことながら、ほとんどの場合、優勝は、高校3年で、最下位は、中学1年です。時々、高校2年が優勝したりする場合もあるようですが、めったにないそうです。競技の勝ち負けの興味としては、学年縦割りでチームを組んだほうが面白いのでしょうが、学年別の競技を見ていると、経営コンサルタント的には、面白いことが見えてきます。大玉ころがしや、玉入れなどの伝統的な競技でさえ、明らかに高校3年は、勝つためのノウハウ(団体競技は、「分業」が勝利のコツ!玉入れで言えば、投げる人、玉を集めて渡す人の分業。短期的に成果をあげるには、「分業」が良い。時間があれば、別の選択肢も考えられるが。)を持っており、しかも、そのノウハウをチーム全員で共有し、徹底的に事前の訓練をしています。一見して、すぐにわかるほど訓練されています。しかし、中学1年はそうは行きません。まだ、入学2ヶ月ですから、大したノウハウもなく(教師から教えられることはないそうです。ノウハウは自らの頭で考えるものだからです。)、もちろん、鍛えられてもいません。面白いのは、中学2年から高校2年の中間層です。ノウハウ(=企業においては、戦略)のレベルは高いのですが、約200名のチームメンバー全員に徹底&定着されておらず、チグハグな戦いを行って負けてしまうチームもあります。その逆にノウハウのレベルは中くらいですが、チームメンバー全員に徹底&定着されていて、まとまりのある戦いを行って勝つチームもあります。「戦略を立てるときに、現在のチーム力を考慮せずに、精度の高い戦略を構築するのは、むしろ、簡単なことです。しかし、それでは、戦略のための戦略構築です。勝利のための戦略構築であれば、大切なのは、まず、現在のチーム力を正確に把握した上で、徹底&定着可能な戦略を立てて、実践することです。それこそが勝利のための戦略構築、そして、その実践と呼ぶことが出来ます。(船井流・力相応一番主義)」

JR西日本の経営者は、どれくらい戦略を実践する「現場」のことを知っていたのでしょうか?その後の言動からすれば、全く知らなかったと思われます。「現場」を知る必要さえ感じていないのかもしれません。そんなことより、例えば「相談役の食の好み」を知っているほうが重要だったのかもしれません。「現場」を全く知らずに、机上の空論的な戦略を構築し、その机上の空論を実践させていたのが、彼らではないでしょうか?「日勤教育」と言う名の単なるいじめが日常的に行われていたのが、その何よりの証拠です。つまり、彼らは、経営者の基本中の基本を知らずして、経営者面をし、経営を行っていたといっても過言ではないでしょう。そんな無能な経営者でも経営者になれる風土、そして、あのような大事故(=品質不良)を起こしても倒産しない企業の立場が、あの問題を起こしたといえるのではないでしょうか?つまり、利益追求の株式会社化が原因ではなく、むしろ、正反対の原因、何をしても、倒産しない、クビにならないという立場が、原因ではないでしょうか?通常の民間企業であれば、とっくのとうに倒産、解雇に間違いないはずですが、JR西日本では、倒産もしていませんし、解雇もされていません。ですから、再発防止を本気で考えるのであれば、ハード的な安全対策と共に、中間管理職以上は、全員解雇、取締役クラスは、私的財産没収をするくらいのことを行わないと、同じような企業風土、同じような立場にある公共交通機関の企業(???)で、同じような大事故(=犯罪!)は、再び、必ず、起きるでしょう。

 話が少し、それてしまいましたが、「組織は戦略に従う」わけですから、そのもっとも大切な戦略構築においては、自社の現在の力量を前提にし、徹底&定着可能な戦略の構築をしなければ、戦略として、たとえどんなに精度が高くても、結局、その実践において、チグハグな戦いとなり、勝利を手にすることは出来ないでしょう。高度な戦略を実践できる組織を、日頃から、創っておくこと。その前提があれば、高度な戦略を立てて、実践し、大勝利を収めることが可能になります。



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