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アパレル最大手のオンワード樫山が、好調な業績を続け、07年2月期連結決算の売上高では、念願の3.187億円となり大台に乗せた。婦人服を中心に百貨店向けが快調に推移し、基幹ブランドである「23区」等の採算も向上し、新規ブランドの開発負担を消化している。子会社の一部には苦戦しているブランドもあるが、純益は拡大している。08年2月期についても、百貨店向けの好調が持続するとみられ、3.250億円の売上を見込んでいる。オリジナル・ブランドでは、レディース向けの「組曲」「ICB」「23区」「自由区」「JOSEPH」などを展開しており、メンズ・ブランドの「23区オム」「ジヨセフ・アブード」「J.プレス」「五大陸」なども堅調に推移している。ライセンス・ブランドは「ジャンポール・ゴルチェ」「ポール・スミス」(既号153:タフな英国オヤジ)「ミッソーニ」「cKカルバン・クライン」「ジョン・バルベイトス」「ソニア・リキエル」「ジョセフ・オム」「セリーヌ」(既号114:B.C.B.Gの代名詞)「チェルッティ1881」などを展開。関連会社のブランドとして「ポロ・ラルフローレン」「ダナ・キャラン ニューヨーク」なども展開している。
日本人はファッションへの関心が高く、体型も諸外国と比較すると均一なため、4サイズ位の商品を取り揃えれば良く、海外アパレル・ブランドにとっては、戦いやすいマーケットである。オンワード樫山も、海外ブランドと対抗するには、世界的視野を持つことが要求されており、積極的な海外戦略を展開せざるを得ない環境である。オンワード樫山は30年以上も海外で事業展開しているが、売上高は全体の1割程度であった。企業の合併・買収などを通じて、海外の売上高を早急に拡大しなければ、欧米ブランドに押し潰される危機感がある。05年5月に英ファッション・ブランド「ジョセフ」を買収した。オンワード樫山としては、過去最大規模の170億円を投じた。同年6月には伊シューズメーカー「イリス」の経営権も取得した。ジョセフの買収時点での売上高は140億円で、08年には300億円に拡大する計画である。イリスにおいても、買収時の売上高24億円を、早急に50億円と倍増させる計画である。今年4月の新聞報道によると、米高級アパレル・ブランド「ラルフ・ローレン」を展開するポロ・ラルフローレン社が、オンワード樫山の子会社でポロ・ブランドを手がけるインパクト21に対し、株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表した。オンワード樫山はグループ全体で41%所有するインパクト21の全株式にについてTOBに応じた。ポロ・ラルフローレン社は、既に保有していたインパクト21の株式約20%を含めて、全株式を取得し、100%子会社として日本マーケットの司令塔とする考えだ。
激戦のアパレル・マーケットにおいて、関西アパレルの雄ワールド(既号076:業態転換)は、経済のグローバル化に伴い、経営のスピードアップと企業買収を回避して、経営の安定を図る目的で、経営陣による自社株式取得(MBO)を05年に実施した。一昨年の時点では企業買収防衛策が、あまり話題となっていない時期であったが、産業活力再生特別処置法に基づいて、経済産業省から後押しを受けた。当時としては話題となった企業買収防衛策であった。旧ワールド社と資本関係のない既存の休眠会社「ベータ社」と「アルファ社」の2社を経由してMBOが実施された。旧ワールドの代表取締役社長・寺井秀蔵個人がベータ社に100%の出資をし、ベータ社がアルファ社に100%出資する資本関係とした。アルファ社はTOBにより旧ワールド社の株主から94%の株式を取得し親会社となる。旧ワールドの残り株式6%を持つ株主に対し、アルファ社の株式と株式交換を実施し、旧ワールドはアルファ社の100%子会社となった。06年4月にアルファ社が旧ワールドを吸収合併し、アルファ社が存続会社となる。同時にアルファ社は社名を「株式会社ワールド」に称号を変更し、経営陣による自社買収が成立した。これによって株式上場も廃止した。旧ワールドがMBO実施を発表した05年3月期の連結売上高は2452億円で、07年3月期の連結売上高予想は2800億円あったが、実績は3334億円であった。6月の株主総会でTOB防衛策について、話題となった企業が多かったが、これにもワールドは先手を打ち、業績もスピード経営が成功した事例となった。
オンワード樫山は「人々の潤いと彩りを与えるおしゃれの世界」を事業領域に定め、「ファッション」を生活文化として提案することによって、新しい価値やライフスタイルを創造し、人々の豊かな生活つくりへ貢献することを経営理念としている。中長期的な経営戦略では、グローバな企業競争に勝ち抜くために、ブランドを基軸におき、その価値の極大化をはかる「ブランド軸経営」を推進している。ファッションのマーケットにおいて、顧客ニーズが急速に多様化するなか、個々の「ブランド価値」増大による、圧倒的な競争優位性の確立を図ることによって、事業規模の拡大と経営基盤の強化を実現し、企業価値増大を図ろうと考えている。ブランド戦略については、「流通別ブランド戦略」を明確にして、ブランドイメージの鮮明化を図り、百貨店流通を主軸に、それぞれの流通における顧客ニーズや競合環境に、最も適応するブランドの開発を展開しようとしている。商品開発についても、パリ・ミラノ・ニューヨーク・上海など、世界のファッションを牽引する都市に現地法人を展開している。トップ・ノウハウを持つ海外関係企業、海外ライセンス・ブランドなどとのグローバル・ネットワークによるファッション・リソース情報と、業界屈指の企画・開発体制をもって、独自性と競争力のある商品開発を目指している。オンワード樫山にとっては、GAPやH&M(ヘネス&モーリッツ)などの、グローバル企業追撃を視野に入れ、全世界で販売網を確立するような世界ブランドを育成する必要がある。上村社長は、世界のオンワードを目指し「世界ブランドを構築」することで、国内マーケットにおける地位を、盤石にしようとする戦略である。
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