日本においての旧財閥系のネームバリューは企業ブランドの中でも最強のブランドです。
第二次大戦前の財閥である、三井、三菱、住友などは典型であり、企業ブランドが確立されていれば、その信用力をもって異分野への進出も有利な展開になっていた。
その企業クループが強大であるがため、グループ間の取引だけでも、大きなビジネスとなっていた。三井、三菱、住友などにおいても、銀行、証券、保険、電気、機械等々、さまざまな分野に関連会社を持ち相互援助による相乗効果を挙げており、いずれの分野においても有数の企業として成長していった。又、それぞれが関連会社として持つ銀行はグループ企業の金融の要となり、商社はグループ企業の輸出入に関係し、日本の貿易立国としての国際社会での活躍に貢献している事は多くが認めるところだと思います。
戦後、財閥解体を企てた占領軍の担当者も企業分割や旧財閥の名称を禁じたのは、旧財閥のブランド力を恐れたからという説もあります。
三菱グループは 1870年に土佐藩より九十九商会が分離され、その経営に岩崎弥太郎が
携わったのが始まりと云われております。1873年には汽船運営会社である三菱商会が設立され、鉱業、造船、保険、銀行、貿易商事、等々へ発展していった企業グループである。
1885年二代目社長に岩崎弥之助が就任し、翌々年には官営長崎造船所を買収している。
1893年三菱合資会社が設立され、会社組織の経営となり三代目社長に岩崎久弥が就任した。
1914年にはスリーダイヤの三菱商標が制定され、翌々年に四代目社長の岩崎小弥太が就任。
1917年には「三菱A型」乗用車が製作開始された。その後自動車製作は、造船部門から重工部門へ引き継がれ、1970年三菱重工業から分離独立するかたちで、三菱自動車工業が設立された。スリーダイヤの自動車は87年もの歴史のあるブランドなのです。
その後三菱自動車は1973年に第21回東アフリカ・サファリラリーでギャラン 16L HT GSが優勝。第8回オーストラリア・サザンクロスラリーでランサー1600GSR完全優勝。
1979年にはポルシェ社にサイレントシャフト特許実施許諾、京都製作所滋賀工場竣工、年間生産台数100万台を越える(100.5万台)。1985年には 第7回パリ〜ダカールラリーでパジェロが総合優勝と全てがうまくいっていた。2002年度には純利益が過去最高を記録した。
2003年には浜松町から品川に建設した新社屋に移転して躍進を続けていった。
しかし、こうした陰で2000年頃から三菱自動車工業への報道が騒がしくなっていった。 2004年になり、2002年4月に起きた横浜市での母子三人死傷事故で、原因がハブの強度不足であるのを、整備不良や積載過剰と虚偽の発表をしていた事が裁判で発覚した。
10月の山口県の山陽自動車道でトラックが料金所に激突して、男性ドライバーが死亡した事故も、クラッチ系統の欠陥でプロペラシャフトが破損したのが原因だった。
この頃は連日のように、三菱自動車工業のリコール隠しとか、クレーム情報隠蔽、国土交通省への届け出義務違反などが報道され、車種も軽自動車ミニカから三菱ふそうトラック・バス(三菱自から商用車部門が分社)の大型トレーラーまで殆どの車種に亘っている。
しかも、会社の最高幹部らが、ぞろぞろと被告席に立つという会社ぐるみの犯罪だった。
とうとう9月27日全国62紙の朝刊に「2000年以前の不具合に対して、リコール隠しと云う、許されない行為をした」として謝罪の全面広告を出すに至った。
10月1日発表された2004年度上半期の国内自動車販売台数では、前年同期比55.2%減で1970年の会社設立以来過去最低の販売台数となった。また、三菱ふそうトラック・バスも27.5%減と報じられた。
全国軽自動車協会連合会の発表でも、三菱のみが減少したと発表される事態となった。 日本には不都合なことは隠そうとする風土がある。結果として人命軽視と云われても仕方の無い企業風土がある。まさに三菱自動車工業の風土がそうである。
これだけの社会問題を起こしていながら、ホームページの「三菱自動車の歩み」の2000年の処に「リコール隠し事件」とたった8文字しか触れられていない。
企業風土などと云えば会社全体が悪いように受け取られそうだが、企業風土は経営者が創るモノ。経営者の体質が腐っていれば、どんな歴史のある有名な企業ブランドでも、砂上の楼閣でしかない。
この数年、東京電力の原子力発電所のトラブル隠し、日本ハムグループの牛肉偽装事件、京都の養鶏所の鳥インフルエンザ事件、全農チキンフーズの鶏肉偽装事件、茨城の核施設の放射能漏れ事件等々頻発しているが、請負業者や元社員などが行政機関などに匿名で通報した事が事件発覚に繋がった場合がある。匿名なのは事件発覚後に不当な処置を恐れての事と思われるが、現在「公益通報者保護制度」が政府で検討されているらしい。
砂上に立っている企業ブランドよりも、腐った経営者を正す勇気のある社員の方が、会社にとってはより大きな財産である事を肝に銘じたいものだ。
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