ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 24

☆ 月のマーク☆

2004.11.16号  

 花王のホームページを見ると、企業紹介のトップに、私たちがめざすものとして「清潔で 美しく すこやかな毎日をめざして」と云うコーポレート・メッセージがでてくる。テレビCMでもでてくる言葉である。花王の製品を見ていると、まさしく企業の事業領域を簡潔に表現されているメッセージであることが判る。花王は 1887年 洋小間物を扱う「長瀬商店」として創業した。 1890年に洗顔石鹸を売り出すにあたり、当時「顔洗い」と呼んでいた化粧石鹸の高級な品質を打ち出すため、発音が「顔」に通じる「花王」というブランドを採用した。この時に「月のマーク」を「美と清浄のシンボル」として採用した。マークは形を変えながら今日に受け継がれている。現在は八代目の形状である。

 国内で売られる花王の一般家庭向け商品でトップシェアにあるモノを拾ってみた。ボディケア商品の「花王石鹸ホワイト」「ビオレ」、入浴剤の「パブ」、柔軟仕上げ剤の「ハミング」、台所やお風呂掃除用品の「マジックリン」、衣料や台所漂白剤「ハイター」などがある。衣料用洗剤の「アタック」は 15年間もトップシェアの座にあり、ライオンの「トップ」やP&Gの「アリエール」の二倍以上のシェアが有ると云われている。又、ヘアケア製品の「メリット」、ヘアスタイリング剤の「サクセス」、衛生用品の「ロリエ」「メリーズ」などのシェア二位製品も控えている。衣料用洗剤では「ニュービーズ」もある。まだまだシェアは低いものの、食用油やドレッシングの「エコナ」ブランドや特定保険用食品として売り出された「ヘルシア緑茶」などもある。ある調査によると一般家庭に4〜5ヶの「月のマーク」の商品が有ると云われている。乗用車で有ればトヨタとか、AV機器で有ればソニーなど、特定のメーカーを指名買いするファンがいるが、ユーザーが商品機能優先で購入し、気がついて見たら家庭内に「月のマーク」が、こんなにも沢山あると云うのも特異な存在である。

 単純な喩え話をすると、国内経済が高度成長過程のなかで勤労者の所得が倍になれば、企業は生産が倍にならなければ成り立たない。売上も倍にならなければならない。しかし、私達の生活においては、所得が倍になったからと言って、洗顔石鹸を倍の量を消費するだろうか?事業戦略としては商品アイテム数を増やす事が不可欠となる。花王には現在30以上の商品ブランドが有るという。花王の商品開発には五原則があり、「社会的有用性の原則」「創造性の原則」「バフォーマンス・バイコストの原則」「調査徹底の原則」「流通適合性の原則」との事。商品開発ではこれを徹底的に議論するそうだ。いくつかの事業戦略の中でフロッピー・ディスク事業に参入した事があった。 ヘアー・リンスというのは髪に養分をコーティングする技術だと云う。花王はこの技術を応用してフロッピー・ディスク事業に参入した。年商が 800億円にも達し異業種の新しい時代に向けた事業として、注目を浴びた事が有った。しかし、花王の目指すコーポレート・メッセージの事業領域には合わず、将来性が無いとしてあっさりと売却してしまった。高度成長時代に「ワッワッワーの輪が三っつ〜」と唄った三木鶏郎さんの作った石鹸メーカーのコマーシャル・ソングをよく聞いた。当時の売れっ子タレント達を擁した「シャボン玉ホリデー」なるバラエティ番組も石鹸メーカーの提供番組であった。残念ながら最近は両社の名前をテレビで聞かれる事は無くなってしまった。

 花王には「花王ウェイ」という企業理念がある。「使命 私達は何のために存在しているのか=豊かな生活文化の実現」「ビジョン 私達はどこへ行こうとしているのか=消費者・顧客をもっともよく知る企業へ」「基本となる価値観 私達は何を大切に考えるのか=よきモノ造り、絶えざる革新、正道をあゆむ」「行動原則 私達はどのように行動するのか=消費者起点、現場主義、個の尊重とチームワーク、グローバル視点」の四つである。企業理念を掲げる事は多くの会社でやっている事である。大切な事はこの企業理念に向かって全社一丸となって歩み、企業業績の結果に結び続けることである。花王の2004年3月期は売上高 6.659 億円、経常利益 1.054 億円と23期連続で最高益を更新している。2005年3月期の9月中間決算においてもプラス成長を維持している。


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