ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 252

☆ ブランド価値の評価☆

2009.05.13号  

 日経BPコンサルティングは、日本最大規模のブランド評価調査プロジェクト「ブランド・ジャパン2009」の調査結果を4月17日に発表した。今年で9回目を迎えたブランド・ジャパンは、国内で使用されているブランドを、消費者とビジネスパーソンが評価する総数54000人の調査データを基にして行われた。
調査はBtoC(コンシュマー市場 消費者による評価)版とBtoB(ビジネス市場 ビジネスパースンによる評価)版の、2つの調査フレームに基づいて、ノミネートされた57業種1500の企業・製品・サービスについて、それぞれのブランド力を客観的な数値から多角的に分析している。調査対象とするブランドのノミネートは、事前調査である「ブランド想起調査」の結果に基づいて行われており、これに前回調査の上位ブランドなどを含めて、BtoC版1000ブランド、BtoB版500ブランドを決定して本調査が行われた。従って、全てのブランドがBtoC版、及びBtoB版にノミネートされている訳ではない。調査方法は日経BPコンサルティング独自の、インターネット調査システムを使用し、20万人の調査協力者モニターによって、毎年9月にブランド想起調査が行われ、11月に本調査、そして翌年4月に調査結果が公表されている。

 ブランド想起調査は強いブランドを顕在化させることを目的に、ノミネートのための事前調査として実施されている。これは企業及び商品・サービスなどの12分野について、「評価している」または「好感を持っている」という肯定的なイメージのあるブランドを各分野5つまでを自由に記入して貰い、純粋想起型、記憶探索型の非助成型の調査方法で行う。
毎年9月に実施するこの調査により、ブランド再生率を算出し、上位にランキングされたブランドを本調査のブランド・ジャパンにノミネートする。
ブランドの「再生」とは、ある条件や場面が示されたときに、過去の経験などからそのブランドの記憶を呼び覚ますことができるか、どうかということである。ブランドの「再認」とは、そのブランドを提示されたときに、過去に見聞きしたことがあるかということである。これらは共にブランドロイヤリティの一つの側面であると考えられている。
因って、ブランドの再生と再認は、ブランド・イメージ形成の前提であるとも考えられている。ブランドと記憶の結びつきが強ければ、それだけその企業や商品・サービスのブランド・イメージが、よりハッキリとしたものになる。日本に流通しているブランドの評価測定を目的とするこの調査では、多くの消費者に記憶されているブランドを調査対象とすることで、調査の精度と価値を高めようとしている。

 BtoC版上位20位ランキング。1位・任天堂(前回ランク1位 以下同)、2位・グーグル(11位)、3位・ソニー(4位)、4位・スタジオジブリ(2位)、5位・パナソニック(10位)、6位・ニンテンドーDS(5位)、7位・ユニクロ(12位)、8位・シャープ(8位)、9位・サントリー(26位)、10位・Windows(17位)、11位・東急ハンズ(15位)、12位・ディズニー(3位)、13位・ハーゲンダッツ(29位)、14位・フジテレビ(25位)、15位・マイクロソフト(54位)、16位・マクドナルド(42位)、17位・Wii(54位)、18位・ヤフー(9位)、19位・無印良品(29位)、20位・ipod(19位)
BtoC版では次の4つの評価指標から総合力を算出している。フレンドリー(=親しみ 好きである・気に入っている 親しみを感じる なくなると寂しい 共感する・フィーリングが合う)。コンビニエイト(=便利 知らない・全く興味がない 最近使っている 役に立つ・使える 品質が優れている)。アウトスタンディング(=卓越 ステータスが高い 格好いい・スタイリッシュ 他にはない魅力がある 際だった個性がある)。イノベーティブ(=革新 いま注目されている・旬である 時代を切り開いている 勢いがある)の観点から評価している。
任天堂は2年連続でトップ。5位にランクされたパナソニックは、昨年10月に社名変更したが、既存ブランドからの昇格と、社名変更の意図が消費者に理解されたこと、強力なプロモーションで認知度低下を防いだことなど、結果としてブランド価値を上げることに成功した。ユニクロは前々回調査で52位、前回調査で12位、今回が7位と毎年ランクアップ。積極的な海外進出やブランド認知度向上プロモーションで、カンヌ国際広告賞を始めとして世界三大広告賞を受賞。繊維開発で東レと、店舗開発で大和ハウスと戦略的パートナーシップを構築し、機能商品ヒートテックインナーが売り切れ続出の、爆発的人気となったことなどが評価された。サントリーは食品・飲料業界のトップ企業として、巧みな広告展開や、ザ・プレミアム・モルツの強力な商品ブランドが後押しして、ビール事業を初の黒字化に導いたことが評価されてランクアップ。
今回調査は100年に一度とも云われる世界不況の最中に実施された。とりわけ電機や自動車業界は、需要減と円高の影響で不況のあおりを、まともに受けた時期であった。トヨタ自動車は調査期間中に、大幅減益や期間従業員の削減などのニュースが大きく取り取り上げられたこともあり、評価が大幅ダウン。前回調査時の7位から29位にランクダウンし、初のトップ10から脱落。一方、3位のソニーは円高やデジタル家電の価格下落などで、業績下方修正が発表されたにも関わらず、安定して上位に留まっており、ソニーブランドのロイヤリティの高さが浮き彫りになった。

 BtoB版上位20位ランキング。1位・トヨタ自動車(前回ランク1位 以下同)、2位・パナソニック(6位)、3位・ホンダ技研工業(2位)、4位・ソニー(3位)、5位・任天堂(4位)、6位・グーグル(5位)、7位・シャープ(10位)、8位・マイクロソフト(9位)、9位・キャノン(7位)、10位・アップル(8位)、11位・日産自動車(12位)、12位・日清食品(23位)、13位・キリンビール(16位)、14位・サントリー(17位)、15位・アサヒビール(14位)、16位・ソフトバンクモバイル(50位)、17位・ジャパネットたかた(21位)、18位・花王(33位)、19位・セブン&アイ・ホールディングス(35位)、同19位・ヤフー(15位)
BtoB版では次の5つの評価指標から総合力を算出している。先見力(時代を切り開いている 成功している 経営者に魅力がある ビジョンがある この企業から学びたい)。人材力(人材が優れている 人材育成に力を入れている 従業員を大切にしている 一度この企業で働いてみたい)。信用力(品質技術が優れている 信頼出来る 環境に配慮している 伝統がある)。活力(チャレンジ精神がある 自由闊達である 人まねが嫌いである エネルギッシュである)。親和力(認知度スコア 正直である この企業に好感を持っている 顧客を大切にしている)。これらについて、18歳以上の有職者から回答を得た。
前年と比較してベスト10にランクインしている企業は、順位の変動は多少あるが、同じ顔ぶれである。11位から20位を見ても、ソフトバンクモバイルの躍進、花王とセブン&アイ・ホールディングスの健闘はあるが大きな変動はなかった。
トヨタ自動車は今回もトップ。前年比で大幅な入れ替わりがなかったのは、企業ブランドは人材力や信用力など、短期的に醸成しにくい要素が大きく影響するため、消費者を対象にする調査と比べると変動が少ないと考えられる。パナソニックとソニー、それに任天堂は消費者からだけでなく、ビジネスパースンからも高い評価を得ている。
ソフトバンクモバイルは広告戦略が功を奏し、前回の50位から16位にランクアップ。昨年7月に発売した高機能携帯端末アイフォーンは、NTTドコモなどのライバルに競り勝ち、国内で独占的に販売する権利を得たことが評価につながった。世界中で話題になった端末を「ソフトバンクモバイルだけが、アップルと契約した」との印象を消費者に与えた。また、白い犬をお父さん役に起用した「白戸家(ホワイト家)」シリーズのCMも話題を呼んだ。白い犬と黒人の起用は、受け取り方によっては人種差別として見られる懸念もあったが、消費者にはすんなりと受け入れられ、逆に企業の活力として評価された。
現在のように不況期には、何も手を打たなければ、ブランドの評価が下がってしまう。積極的に策を講じてブランドの評価を引き上げていくことは、大きな飛躍につながるようだ。


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