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北海道の西海岸、札幌から北へ約 100�辧�旭川から西へ約 80�劼僚蠅法�古くから漁業で栄えた「増毛」と言う小さな町がある。日本海に面して豊富な海の幸に恵まれ、その昔には鰊の群が来るとカモメが海一面に飛び交う様子から「カモメの多いところ」の意味をアイヌ語で「マシュケ」と言われたのが町名の由来である。
冬の最低気温がマイナス 10度程度、夏の最高気温は30度近くにもなる。 北国としては温暖な気候に恵まれた所である。 5月の中頃には花弁が広く淡紅色が濃いオオヤマザクラが美しい花を咲かせ、木質が固く燃えにくい事から 7度カマドに入れても灰にならないといわれるナナカマドが秋には赤い実をつける。海からは甘エビ、鮭、タコ、カレイ、ウニ、アワビなどの新鮮な魚介類と海産物加工品。山からはリンゴ、サクランボ、なし、ブドウ、桃などの果物が採れ、里では水稲、イチゴ、アスパラガスやジャガイモが栽培されている。街には銘酒國稀（くにまれ）がある。
こんな長閑な町に世界でも屈指と云われるフレンチ・シェフが1954年に誕生した。
三國清三は15才で料理人を志し、札幌グランドホテルや帝国ホテルで修行する。帝国ホテルではアルバイトの鍋洗いにしか過ぎなかったが、村上信夫総料理長の推薦を受けて弱冠20才で駐スイス日本大使館の料理長に抜擢される。東京オリンピックで選手村の総料理長を務めた村上氏は、かってテレビ番組で「料理人の腕は料理を作らせなくても、塩の使い方を見ていれば判る。三國くんが野菜に塩を降っている処を見て、彼なら大丈夫だと思った」と推薦理由を語っていた。大使館勤務の傍ら現代フランス料理界の天才料理人と云われるフレデイ・ジラルデのもとで修行を積み、トロワグロ・オーベルジュ・リィルやアラン・シャペルなどの三ツ星レストランで修行を重ねた。
83年に帰国し、ビストロ・サカナザのシェフを経て、85年東京・四谷に「オテル・ドゥ・ミクニ」を開店する。開店する時には自己資金が無一文で、三國の料理人としての腕に賭けた周囲の人達の援助でオーナー・シェフに成れたというエピソードがある。
その後ニューヨークの最高級レストラン「ザ・キルテッド・ジラフ」、シドニーの「ホテル・リッツ・カールトン」、フランスの「オテル・ドゥ・クリヨン」など世界各国でミクニ・フェスティバルを開催する。93年にはロンドンのホテル「ザ・バークレー」でおこなわれたミクニ・フェスティバルではエリザベス女王ご来訪の栄誉を賜る。
99年には世界五大陸トッブ・シェフ 5人の一人に選ばれ、フランスの高級レストランの料理人を中心とする組合にも日本人として初めて加入した。ボルドー・ワインの普及貢献で勲章も受けている。世界各国で開催されている料理コンクールの審査員なども数多く努めている。00年に開催された九州・沖縄サミット福岡蔵相会議では総料理長も務めた。 三國は料理人として様々なボランティア活動を行っている。東京ベイヒルトンでのミクニ・フェスティバルでは「世界の子供達にワクチンを」のチャリティを再三開催している。
沖縄・米国海軍基地でボランティア・フェアを開催したり、米軍センターで開催したフェアでの収益金はユニセフに寄付をしている。00年には米海兵隊より感謝状を送呈された。
三国は日本の食卓にはファーストフードや合成添加物を使用した加工食品が席巻している事に危機感を感じている。子供の糖尿病やアトピー、花粉症などが増えているが、自然の食材をきちんと食べていれば病気はしないとの思いがある。
料理人の育成を目指して創った「日本フランス料理技術組合」を率いて「子供の味覚」を育てる活動をしている。子供に自ら料理を作らせる「キッズ・シェフ」を日本各地で開き、一流シェフが地方の地元で採れた食材を使った料理を子供達に教えている。子供達の食の味覚を育てていく事と、同時に子供の親たちに感心を持ってもらう事が、食の乱れを正すことに繋がっていくと考え、安全、安心なスローフードの見直しを提唱している。
三國は自分が生まれ育った増毛の町にある山海の自然で採れる食材に思いを馳せながら、「安心出来る食材を作っている小規模な生産者が、きちんと利益を得られる仕組みを作っていく事が必要だ」「地産地消とは、その地域と一緒に呼吸することだ」と云う。 政府は「魅力ある日本を世界に発信」するとして知的財産戦略本部を設置している。その部会にあるコンテンツ専門調査会・日本ブランド・ワーキンググループが「日本ブランド戦略の推進」について、2月25日の会合で報告書の取りまとめが行われた。
この会合の委員でもある三國が大変興味深い発言をしているので議事録より抜粋してみた。
『私はフランス料理をやっているのでフランス人として発言したいんです。
世界の人達の味覚は「甘い」「酸っぱい」「しょっぱい」「苦い」の四つしか持っていないが、日本人だけが「うまみ」を合わせた5味を持っている。そのうまみは歌舞伎などの上手にも通じており、世界でも日本人は圧倒的に手先が器用なんです。それは5味をもっているから、つまり他の国の人達より感性が1つ余計に在ることに因るんです。
日本人の我々は気がついていませんが、日本人そのものがブランドなんです。フランスから見ると感性が 1つ余分に在るわけですから、手仕事でもファションでも、料理でも陶芸でも、考えでも全て世界一。日本人全員が日本ブランドの資格を持っているのに、自分たちが優れている事に気がついていない。フランス人から見ると非常に残念な事です。
現代フランス料理が世界のトップになっているのは、日本料理の影響を受けているからなんです。晩餐会がどうしてフランス料理かと云うと、 100年前にパリのホテルリッツの料理長だったエスコフィエが初めてレシピを作った。それまではレシピがなくてみんな家業的にやっていたのが、そのレシピで同じ日に同じ時間に世界中で同じ料理を作れるようになった。その後、今から30年位前にポール・ボキューズさんが煉瓦屋さんで、トロワグロさんがソニーのマキシムで初めて料理長になり日本の懐石料理に出会うことになりました。
それまでのフランス料理は 10人盛りとか 20人盛りになっていて、栄養価も何も考えていなかった。この二人がフランスに戻り革命を起こしたんです。一人ひとり、一つひとつ、一皿一皿懐石料理のように盛りつける。春、夏、秋、冬、の四季折々にはお皿や盛りつけを変たり旬の食材を使う。今のフランス料理は日本の懐石料理から影響を受けて、世界中のフランス料理のベースになっている。私と同じ世代なんですけれど、現代フランス料理の最高峰と言われているアラン・デュカスも影響を受けている。
日本がいかに優れているか、日本そのものが既にブランドであり、日本人そのものが世界のブランドで在ることを認識すべきだと思います』
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