「商品が売れないのは、価格が高いからではない。価格に見合った商品価値がないから売れないのだ。商品そのモノの価値にプラスされた価値があれば、プラスされた価値の価格分だけ高く売れる。そして、プラスされた価値よりも低めの価格設定をすれば、お客様には繰り返し買って頂ける」セブン・イレブンの鈴木会長の話である。
売る商品やサービスに悦びや感動など、顧客のココロを満足させるモノをプラスして売るのがサービス業です。つまり、商品に付加価値を付けて営業するのがサービス業です。
東京ディズニーランドと東京ディズニーシーのテーマパークを合わせた、東京ディズニーリゾートには年間2500万人の人達が入園している。
東京ディズニーランドの年間入園者数1700万人の9割はリピーターだと云われています。
この高いリピーターの獲得こそが、サービス業で成功するための最も重要な事なのです。
映画やディスニー・ワールドで世界最大のエンタテイメント・ビジネスを創ったウォルト・ディズニーは「人は誰でも、世界中でもっとも素晴らしい場所を、夢に見、創造し、デザインし、建設することができる。しかし、その夢を現実のものとするのは人である」と語っている。 東京ディズニーリゾートのゲートをくぐると、異次元の空間に自分が存在する。
この「異次元空間の演出」が東京ディズニーリゾートの提供する付加価値であり、繰り広げられる演出のテーマは「ファミリーエンタテイメント」です。
東京ディズニーランドが開業したときに、遊園地協会が加入を申し出たが、東京ディズニーランドは断ったそうである。「私たちのテーマパークは遊園地ではありません。野外劇場
なのです」と答えたという。
ディズニーリゾートの理念をサービス業務全般に機能させるときや、従業員教育をするときにも野外劇場として説明、運営した方が全てに分かり易く、なおかつ「お客様を、最高におもてなし」をする仕組みなのだ。
お客様をゲストと呼び、従業員はキャスト、制服はコスチューム、職務マニュアルは脚本、勤務場所はオンステージ、サポート部分をバックステージと呼んでいる。
ウォルト・ディズニーが語っている「人」とは「人の知恵」であり「人のココロ」である。野外劇場のショーでは数多くのソフトがプログラミングされている。「知恵とココロが生み出すソフト」である。
テーマパークであることからエリア全体や各アトラクションにも「テーマへのこだわり」を徹底させている。各アトラクションで作られる構造物も細部に至るまでリアルに作られ、小道具などは実際に現地まで行って収集している「本物へのこだわり」がある。パーク内には鏡の設置していないトイレが多くあり「異次元空間へのこだわり」から、ゲストが鏡を見て現実の世界に戻る事を避ける配慮もしている。天地災害や事故などによるゲストやキャストの「安全へのこだわり」も徹底されており、ゲストが多い時には入場制限がされている。お客様にショーを「楽しんで貰う事へのこだわり」から、入園者数が多くてサービスが行き届かない場合にも入場が制限される。アトラクションの演出は勿論の事、キャストがゲストの楽しみを阻害していないかにも注意が払われている。「効率よい運営へのこだわり」としては、ゲストを目的のアトラクションまでスムースに誘導するときや、待ち時間にも飽きさせる事のないようにアトラクション施設のレイアウトやキャストの配置をおこなっている。キャストの労働生産性、つまりムダのない仕事のやり方についても徹底したソフトが構築されている。
施設や設備などのハード部分はソフトのフログラミングに従って設営されている。
サービス業の失敗の多くは、土地や建物の余剰設備の有効活用と称してハード優先のプロジェクトとなり、結果として顧客のココロに響くモノは何も無い場合が多い。
ディズニーリゾートの「こだわりのプログラミング」はゲストが一度で全てを体験出来ることはない。あまりにも多岐に、細部に渡っているので、一度では気がつかない事が多いのだ。因ってゲストは何度行っても新しい付加価値を発見することができる。リピーターが初めて入園した時と同じように新鮮で、感動する事ができる所以である。 東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは3月期連結決算で、入園者数は前年度比1.8%減の2502万人と発表した。売上高3310億円、経常利益308億円であった。前年度の開園20周年のイベントで過去最高となった反動と、台風や猛暑の影響で前年度比減となった。
05年度は2月に開業した3番目のホテルが本格稼働することや、新しい遊具施設の導入で2550万人の入園者数を予想している。06年度は過去最高の3466億円の売上予想。08年度はカナダのサーカス劇団の専用劇場を隣接地に建設する予定である。
一方、北九州市で90年に開業した新日本製鐵のテーマパーク子会社、スペースワールドは5月13日に福岡地裁小倉支部に民事再生法の適用を申請した。資本金を100%減資し、札幌市のリゾート運営会社である加森観光に譲渡、加森観光の全額出資会社となる。累積債務超過分は親会社である新日本製鐵がすでに償却している。
大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンも苦戦しており、入園者が前年の988万人から810万人の大幅減となった。05年度も愛知万博や香港ディズニーランド開園の影響で大幅減は避けられず、770万人になると予想されている。
全国のテーマパークでは東京ディズニーリゾートが一人勝ちの展開になっている。 5月20日の新聞各社の紙上に、東京ディズニーリゾートの運営会社オリエンタルランドが、元暴力団幹部で右翼団体の幹部が深く関与する不動産会社に、本社社屋の清掃業務を委託し、昨年末までの7年間で総額9億円を支払っていたと報道された。
この不動産会社は他の業者に業務を丸投げし、差額の3億7000万円を得ており、結果として右翼団体幹部が関係する会社に破格の利益をもたらしたことになる。
オリエンタルランドの生みの親とも云われ、00年1月に死去した高橋元会長は同右翼団体幹部が設立した建設会社の、設立時の第二位の株主として名を連ねていた。
二人のつき合いは、60年代の浦安埋め立て時代からだったという。東京ディズニーシーの造成工事にも発注していたと報道されている。
子供や若者達に夢を与えるテーマパーク事業の陰で、その運営会社の元会長が闇の世界と繋がっていたことになり、灰色の関係は30年以上も続いていたことになる。
6月18日の読売新聞一面トップにも同右翼団体幹部が関連するゴルフ場開発会社にオリエンタルランドが出資していたとの報道があった。この出資に関しては加賀見現社長が決裁していると云う。これらの事態に対して、世間を騒がせた事の包括的な責任として、社長始め役員全員の処分を発表した。
このような報道を再三目にすると、ウォルト・ディズニーの言葉も虚しく感じてくる。
日本最大のテーマパークである東京ディズニーリゾートには、開園以来3億人以上の人達が夢を見に訪れている。子供や若者達の悲痛な叫びが聞こえて来そうだ。
「夢をこわさないで!」
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