8月30日 トヨタは最高級ブランド車「レクサス」を日本市場に投入した。1989年米国でスタートして以来、車両自体の品質と性能の良さ、きめ細やかな顧客サービスがユーザーの評価を得た。米国の高級車市場で00年から4年連続で販売台数トップになり、最高品質を意味する「レクサス・ライク」という言葉が生まれるほどの大成功となった。
トヨタはレクサスを世界的なプレミアムブランドに育てるためには、母国である日本市場での成功が不可欠であるとして、逆輸入で日本に上陸させた。
日本の高級車市場で先行している欧州勢のベンツやBMWの、歴史と伝統に裏打ちされたブランドに対し、利益1兆円超を稼ぎ出すトヨタの資金力をもってしても一朝一夕に凌駕するのは容易ではない。国内最強のトヨタが挑戦者として高級車市場に挑む。
国内市場への先発は「GS(現アリス)」と「SC(現ソアラ)」を投入した。9月には「IS(現アルテッツァ)」を発売する予定である。06年春にはフラッグシップモデルとなる「LS(現セルシオ)」と「GSハイブリッド車」を投入し、成熟している国内市場において、新たな需要開拓を狙っている。
トヨタには「日本独創」という言葉があるという。日本の文化や独自技術の可能性を磨き上げて世界市場制覇に向けて打って出る考えである。
3月にジュネーブで開かれたモーターショーでレクサスISの試作車が展示された。トヨタはレクサスブランド確立に向けて、イメージ戦略のキーとなる外観や内装のデザインには、日本独特の美意識に基づいた造形を随所にちりばめて欧州市場にアピールした。
高級車として位置づけているレクサス車にハイブリッド・システムを搭載するのも、日本独創のメッセージである。ハイブリッド技術で先行しているトヨタでは、2代目プリウスが速度性能の向上に成功し、05年の欧州カー・オブ・ザ・イアーに選ばれた。
現在のハリアーに搭載されているハイブリッド・システムは2代目プリウスの2.5倍の加速性能を持ち、欧州勢のベンツ車やBMW車以上の加速性能を実現した。
今後はすべての業界が環境に対する貢献が求められており、トヨタは燃費向上で大きく貢献することになる。低燃費で地球に優しく、車両本体の性能が欧州勢より優れているとなれば、日本独創が世界を征するのも遠くないことだろう。 読売新聞とNTTレゾナントが協同で実施した消費者モニター調査によると、40代から60代男性に国内市場で人気のある内外の高級セダン22車種の中から好きな3車種の回答を得たところ、上位5車種はいずれも国産車が選ばれ、アフターサービスの良さ、手頃な価格帯、燃費の良さが支持された。
トヨタ車が1〜3位を占め、セルシオが39.0%、クラウンが21.6%、マークXが18.7%の支持を集め、シーマとレジェンドが18.3%で同率4位だった。調査時点では発売前だった新高級車ブランドのレクサスが12.5%で7位となり、国内市場で圧倒的人気を誇るトヨタ車の強さを見せつけた。一位のセルシオは89年に発表されたトヨタの最高級車である。
輸入車ではBMW5シリーズが6位になったのを始めとしてトップ10に4車種が入った。
ベンツSクラスとジャガーXJは同率8位で、ベンツEクラスが10位となった。
輸入車派はデザインやブランドイメージのかっこよさと安全性を基準に選んでおり、国産車派は実用性を重視して選んでいるようである。
実際の購入に関しての回答で、出費してもよい金額は300万円台29.2%、400万円台18.1%、500万円台18.0%となり、600万円以上と回答した人は10%だった。 国内における高級車市場でブランドイメージが浸透しているベンツやBMWに対し、トヨタが差別化に位置づけている戦略がある。車両本体の品質や性能だけでなく、最高の販売サービスと組み合わせることで、高級車ブランドとしてのイメージを高める“最高のおもてなし”という新機軸だ。販売の最前線に立ってお客様を“おもてなし”するスタッフに対して徹底的な接客教育を実施している。日本古来の伝統的な礼儀作法をもとに、表情やおじぎの仕方から名刺交換にいたるまで細かく定めた“レクサス礼法”を販売担当者達に徹底させるとともに、高級ホテルやデパートのコンシェルジェからも一流の接客技能を学んでいる。
従来の販売台数を追い求めていた手法から、ブランド車としての付加価値を創出して販売する手法に転換が求められており、量の販売から質の販売へのギアチェンジである。
トヨタのフラッグシップモデルであるレクサスには「ときめきとやすらぎに満ちた最高の時間を過ごせる」高級の本質を追求し、「お客様がレクサスと関わる総ての場面で、こころの満足、ゆとりを提供する」ことでブランド価値を高める戦略をとっている。
先のモニター調査で圧倒的人気があったセルシオの最上級モデルは787万5千円もする。
来春には最高級車レクサスLSに進化して投入されるようだが、今後クルマを買う予定の人が36.2%いた中で、高級セダンを買う予定の人は11.3%にとどまった。
お父さん達にとって高級セダンは高嶺の花で、夢の中でしか乗れない車のようである。
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