ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 71

☆ セレブが持つ革製品☆

2005.10.18号  

 上質な革を使用したバリー(Bally)の製品は世界中のビジネスマンや女性達の憧れである。マイケル・ダグラスやマドンナなど世界のセレブ達に愛されてきたバリーは、靴メーカーとしては世界的に著名な企業である。
1851年、バリーはスイスのシェネンベルトでカール・フランツ・バリーによってリボンメーカーとして創業された。カールフランツバリーはパリにセールスに出掛けたときに、ショーウィンドウにある洗練された婦人靴に魅せられた。妻の靴のサイズを知らなかったためたくさんの靴を買ってきたのがシューズメーカーとなるきっかけだったと云われる
それ以来、靴を徹底的に研究し、世界中から素材を調達、靴ひもや靴糊などの素材、縫製にこだわった。1892年にはロンドンのニュー・ボンド・ストリートにショップをオープンさせたのを始め、早くから欧米に直営店を持つようになった。
「いつの時代にも愛され続ける永遠なもの」を経営理念として、35万足分の木型を持つ世界におけるシューズのビックブランドとなっていった。
1976年にはハンドバック及び革製品のラインも追加した。現在の展開するアイテムはシューズ、バック、ベルト、スモールレザーグッツ、財布などから、ファションジュエリー、スカーフ、ネクタイ、プレタポルテ、時計などへと拡大している。


 99年に米私募債ファンドのテキサス・パシフィック・クループに買収され、クリエイティブ・ディレクターにはスコット・フェローズが就任した。 これにより 00年にニューチームが結成され、150年の伝統と新時代の感性とのコラボレーションによる新生バリーが
誕生した。それまでの伝統や高品質という固いイメージに加え、ファッション性や斬新さを強く打ち出す方向に進展した。
アメリカ人デザイナーによるブランド名のBを幾何学的にデザインした「ビジーB」シリーズや、ストライプが印象的なトレイン・スポッティング・シリーズが新たな定番商品となった。日本の若い女性達からはアクセシブル・ラグジュワリー(手の届く贅沢)として大人気を博している。
02年には数多くの外資系ブランドを成功に導いてきた伊藤忠が、バリーの 100%子会社であった日本法人バリー・ジャパンから株式の80%を取得した。現在は東京にある高級ブランド・メーカーは銀座や表参道に路面店を積極的に展開している時代であり、ブランドの運営にヒト・モノ・カネのハワーが必要となっている背景がある。潜在的売上能力がとても大きいバリーは、伊藤忠の経営参画によって新たな戦略を打ち出した。日本市場におけるファションの中心地である東京で新生バリーの存在感を最大限にアピールすることや、それまでのバリー・ジャパンではデパートなどを通じて販売していたが、新規出店などで売上を伸ばす有効な施策を大幅にアップさせる計画だ。
現在は旗艦店としての東京・銀座店と六本木のケヤキ坂にある六本木店、そして大阪の路面店を含む42店舗を展開している。

 154年の歴史を誇り、今なお愛され続けるバリーの壮大な軌跡と最新コレクションが「バリー靴の回顧展」として9月20日から10月10日まで、日本橋・三越本店、バリー・ブティック銀座店、バリー・ブティック ヒルトンプラザWEST店にて順次開催された。
カール・フランツ・バリーは靴への愛情とクォリティや伝統を尊重する気持ちから、さまざまな靴の収集をしていた。そしてカール・フランツ・バリーの住居は 42年に世界でも
有数のコレクションを誇る靴の博物館として改装され、現在も多くの人達が訪れている。
今回は、その博物館よりルイ 15世洋式の靴や宇宙飛行士が履いた靴など 9足の収集品と
共に、19世紀以降のバリー・ブランドのコレクション27足を取り寄せて展示された。
バリーが創業以来一貫して履き心地の良いディテールにこだわった上質でスタイリッシュなデザインを追求してきたこと、スイスの伝統である信頼性をブランドの根幹にしていることを、見学者達の多くが評価していた。

 バリーは米アポロ計画ではNASA米航空宇宙局の依頼で、アポロ11号の宇宙飛行士の靴を開発した革靴のインターナショナル・ブランドであるが、最近は高級スニーカーが注目を浴びている。独特な 2本の線が入った高級スニーカーなどが、バリーの雑誌広告でクリエイティブに扱われている。おしゃれだけれど価格もかなり高いという高級スニーカーのマーケットは拡大傾向にある。その中で先行するプラダを別にすると、トッズ(Tod‘s)と共にバリーが注目ブランドとなっている。
高級ブランドの日本における主要アイテムはバックである。革製品を長年扱ってきたバリーにも多くのバックがラインナップされている。現在の人気は前述した「Busy−B」ラインである。コットンのトート・バックなどはバリーとしてはリーズナブルな価格で店頭に出されている。昨年度のバリー・ジャパンは国内で約70億円を売り上げた。
今後の販売方針は「拡大路線ではなく、接客などの質の向上を目指す」とのことである。




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