ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 74

☆ お〜いお茶☆

2005.11.08号  

 仕事の合間の気分転換、親しい人とのおしゃべり、食後の口直しに欠かせないのが「お茶」である。お茶には紅茶やウーロン茶があるが、私達にとって最も馴染みが深いのが緑茶である。これらのお茶にコーヒーを加えて「お茶する?」という、くつろぎの時間を求める喫茶の習慣は、私達の日常の生活や活動とは切り離せない文化になっている。
とくに緑茶とコーヒーには、嗜好品としてのこだわりを持つヘビーユーザーが多くいる。
歴史的にも世界初の株式会社となった東インド会社が、最初に扱った商品がお茶であったと云われている。お茶貿易の関税を巡る争いがあったボストン茶会事件は、アメリカ独立戦争の引き金になったとも云われている。アジアを原産地とするお茶が、このような幾つかの世界史的な出来事を通して世界に広まっていった。とくに日本社会では室町時代から茶の湯などに代表される独特の「お茶の文化」が栄え、それとともに一般庶民の日常生活にも必要不可欠な飲み物になっていった。


 最近の海外では「寿司バー」などの日本食レストランや、五感が生む芸術品といわれる「和菓子」店の進出などで日本食ブームとなっている。それに伴って日本産の緑茶が注目を集めている。紅茶やコーヒーと違い緑茶は砂糖やミルクを入れずに飲むので、カロリーを気にせずに飲めるのも人気の一因となっているようだ。
貿易統計によると、昨年の緑茶の輸出は872トンで10年前の2.8倍になっている。
経済成長が著しいアジア地域の購買力が上がり、特に香港、シンガポール、台湾の富裕層が高級品を買っている。 ヨーロッパでもキロあたり 1万4千円もする高額商品に引きあいが多く、高級煎茶や玉露が現地業者に販売されている。北米でも江戸前寿司には日本産の緑茶しか合わないとのPR効果や、健康食品としても高級緑茶に人気が集まっている。
国内マーケットではペットボトル茶の普及で高級緑茶の需要が減少している。ペットボトル茶に使用する低価格品の需要は伸びているが、この分野では中国産品との価格競争が激しくて、ほとんど利益は出ない状況になっている。
海外では高くなければ日本の緑茶では無いなどと、日本産緑茶に対する強いイメージがあり、「日本の緑茶」が高級ブランドとして受け入れられている。日本人でもあまり飲まないような、高級緑茶を飲むことに海外の人達はステータスを感じているようでもある。
1980年代後半まで北米向け輸出は低価格品を中心としていたが、円高の進行もあり市場は中国産に席巻されてしまった。80年代には年間 1千トン以上あった対米輸出は、90年代始めには約百トンにまで減少した。
日本の茶業界は価格競争になりやすい低価格品の輸出をやめ、ブランド力で勝負ができる高価格品の輸出に切り替えた。高級緑茶の収穫後すぐに蒸して旨味を逃がさずに作るような製造工程を強調し、手間暇の掛かる工程とお茶の入れ方など、海外には無いノウハウをアピールする事で高級感を浸透させていった。
国内では高額商品が売れにくくなっていることもあり、海外へ積極的に売り込んでいる。

 日本茶と一口に云っても全国各地で生産され、それぞれに歴史があり、この土地ならではの特色もあり、独特の風味を持っている。全国にあるお茶の産地を、高級宇治茶専門店の「ふじや茶舗」のデータを参考にさせてもらった。
「新潟県・村上茶」日照時間が少ない厳しい環境で育つため玉露に近い甘みのある煎茶
「埼玉県・狭山茶」鎌倉時代からの関東最大の産地。甘い濃厚な香味が特徴。
「神奈川県・足柄茶」比較的新しい産地。首都圏に近いお茶処として注目されている。
「静岡県・静岡茶」全国一の生産量。主として煎茶の生産。さわやかな香味が特徴。
「岐阜県・白川茶」奥美濃の山間地で栽培。さわやかな香味が特徴。
「愛知県・西尾茶」矢作、天竜、豊川の各流域と西尾市が産地。抹茶の生産量は全国一。
「三重県・伊勢茶」生産量、生産額、栽培面積とも3位。香気が強く、ほのかに甘い煎茶。
「京都府・宇治茶」古くからの栽培だが全国5位。抹茶、玉露、煎茶の高級品に特化。
「奈良県・大和茶」伊勢茶や宇治茶の産地と連なる。さわやかな味と上品な香味。
「福岡県・八女茶」八女市矢部川流域が産地。玉露生産量は全国一。煎茶や抹茶も生産
「宮崎県・日向茶」煎茶、玉緑茶、ぐり茶(茶釜入り茶)、気候が栽培に適している。
「鹿児島県・かごしま茶」静岡に次ぐ生産量温暖な気候で香り高い新茶が一番早く出荷

「お〜い お茶」とは凄いネーミングをしたもんだ。畳の間には卓袱台があり、テレビにはニュースが流れ、誰かさんがタバコをくゆらせながら新聞を広げて「お〜い お茶」と、もう一人の誰かさんに叫んでいる何処の家庭でも見られる光景が目に浮かぶネーミングだ
伊藤園は 1966年に創業した日本の伝統飲料である緑茶リーフのトップメーカーである。
お茶と云えば老舗のイメージだが、創業してから 40年も経っていない新興企業である。
79年に中華人民共和国と「ウーロン茶」の輸入代理店契約を締結し、日本の食生活に定着したウーロン茶を全国に広めた。その後飲料マーケットに参入し、81年には世界初の「缶入りウーロン茶」の開発に成功し、それまで無かった無糖飲料のマーケットを創造した。
85年には技術的に不可能と云われた「缶入り緑茶」の製品化に成功。現在は緑茶・紅茶・ウーロン茶はもとより、野菜・果実・コーヒーなどの総合飲料メーカーとして創業以来連続増収を続けている。ドリンク事業の緑茶ドリンクでは「お〜い お茶」が他社を寄せつけないダントツのシェア1位である。ネーミング効果とは恐ろしいモノである。
92年に株式を店頭公開、96年には東証第二部に上場、98年には第一部に指定替えした。
本社は東京都渋谷に構え、全国 26地区 192拠点に支店・営業所・出張所があり、154の直営店で営業している。資本金 126億5千万円、売上高 2600億円、経常利益 190億円、自己資本比率64%(05年4月期)と財務体質の優れた緑茶リーフのトップブランドである。
伊藤園では消費者の関心を引き留めておくため販売促進キャンペーンを常時行っている
「伊藤園 お〜い お茶 新俳句大賞」を募集したり、応募期間は終わってしまったが、お茶に合う老舗の「とらや 特製和菓子プレゼント」のキャンペーン、10月24日発売の新商品「極匠を1000オフィスプレゼント」など消費者を飽きさせない企画を次々と仕掛けている。
85年からは社会貢献の一つとして、「伊藤園レディース ゴルフ トーナメント」の開催スポンサーとなっている。今年も 11月11日から 13日まで、千葉県長南町のグレートアイランド倶楽部で開催される。賞金総額 7.000万円、優勝賞金 1.260万円。優勝者当てクイズの応募ランキングでは現在、宮里 藍、不動裕理、横峯さくらの順となっている。




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