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ドルチェ&ガッバーナは世界のファッション界で、現在のトレンドセッターと云っても良いくらい、圧倒的な人気を勝ち得ているブランドである。メンズ・レディースの両方で、これほど成功している例は見ない。世界のファッション界はドルチェ&ガッバーナのトレンドを、横目で見ながら追随している感すらある。03年S/Sで発表した破れ目や、継ぎ接ぎだらけのクラッシュドデニムや、高度なテクニックとデザインを施したカスタマイズ・ジーンズは、大ブームを巻き起こし、「ドルガバ」という略語までできたほどである。ドルチェ&ガッバーナが求める女性像は、「リラックスして自分の為にオシャレをする」「ほんの少し享楽主義者風でいて、細部まで気を配る」「強い女で自分自身を好み、他人からも好かれる」女性だと云う。情熱的で華やかな反面、斬新で妙な拘りを持っている部分もある。裏地が豹柄のスーツなど普通の人では考えもつかないアレンジをしたりする。提案するライフスタイルは自由であり堅実であること。アバンギャルドでいながら、セクシーであること。正反対の要素を無理なくマッチさせてしまうイタリアン・マジックは、「スタイルとは内にあるもので、それを追求し、選択するのは自身である」とのコンセプトで、85年にミラノ・コレクションでデビューして以来、僅か20数年でミラノの覇者となった。
ドメニコ・ドルチェは58年8月に、イタリア・シチリア島に生まれる。かなりの小柄で眉毛のない丸く大きな目、オチョボ口で丸禿げの男性である。生家は縫製工場を経営しており、彼も工場を手伝いながら服創りの基礎を学んでいた。ステファノ・ガッバーナは62年11月にイタリア・ヴェニスに生まれる。やせて背が高い以外は、特徴のない顔つきで、東洋人のような男性である。グラフィックアートを学んでから、広告代理店に勤めていた。二人は共にマランゴーニ・ファッション学園の出身で、80年にミラノのファッションデザイナーのスタジオで働いている時に出会った。意気投合した二人は、82年にミラノの中心部でオフィスを構えるようになった。完成度の高いテーラーリング技術を支えるのは、子供の頃から慣れ親しんでいたドルチェのクラフトマンシップ。それにガッバーナの経歴がジャーナリスティックなセンスを加味させ、ラグジュワリーでありながらセクシーなデザインを、絶妙なバランス感覚で生み出すコンビとなった。85年のミラノ・コレクション新人発掘セクションで初めてショーに参加。レディース・コレクションを発表して「Dolce&Gabbana」ブランドが誕生した。87年にはニットウェアー・コレクション「ル・マグル・ディ・ドルチェ&ガッバーナ」を発表。89年にランジェリーとビーチ・ウェアーを発表。90年にはミラノにレディースのオンリー・ショップをオープン。同年にはメンズ・ウェアーを発表し、翌年にメンズのオンリー・ショップもオープンさせた。94年にはセカンド・ライン「D&G」を発表し、生産・販売はイタリア・イッティエレ社に担当させている。他にも「ドルチェ&ガッバーナ・ジーンズ」「&」がある。96年にはニーヨーク・コレクションにも参加した。二人はゲイであることでも有名で、現在も交際中との噂も伝わっている。アルマーニ(既号131.モードの帝王)やベルサーチ(既号134.連続殺人魔とベルサーチ)など、ミラノのファッション界にはゲイが多いといわれる。
マドンナは全世界で4億枚のアルバムと、約7500万枚のシングルを売り上げているという。世界で最もセールスが多い女性アーティストとして、ギネスブックに認定されている。女優としても最悪の映画を選ぶゴールデンラズベリー賞の常連でもある。最悪主演女優賞は「上海サプライズ」など5回、最悪助演女優賞は「007/ダイ・アナザー・デイ」「フォー・ルームス」の2回、「スゥエプト・アウェイ」では最悪スクリーン・カップル賞も得ている。2000年の特別賞・20世紀最悪主演女優賞を含め9回の受賞歴がある。「ポップス界の女王」とも呼ばれ、それだけ注目度の高いエンタティナーであることの証である。ドルチェ&ガッバーナは93年に、マドンナのワールド・ツアーのために、1500点ものデザインを提案した。以来、マドンナはドルチェ&ガッバーナが、大のお気に入りとなった。99年にはホイットニー・ヒューストンのワールド・ツアーでも衣裳を担当。ほかにも彼らのファンには女優のモニカ・ベルッチ、歌手のカイリー・ミノーグ、デビッド&ビクトリア・ベッカム夫妻などのセレブが名を連ねている。93年には過去10年間にドルチェ&ガッバーナを身につけたスターの写真を集めた「Hollywood」を出版。日本でも藤原紀香やサッカーの中田英寿、プロ野球の新庄剛志などがマニアとして有名である。
ドルチェ&ガッバーナの07S/Sワールド・キャンペーンの広告が、昨年3月にイタリア公共広告監視機構によって、差し止められる騒動が起こった。これらの問題が取りざたされてから半年後には、一連の批判について否定した上で「今後の新たな広告に関して、批判される要素はない」との考えを表明していた。しかし、昨年末までの雑誌広告やWebサイトには、ラグジュワリーなファッションを身につけた女性の中に、全裸の男性がいる広告が公開されていた。ドルチェ&ガッバーナだけに限らずファッションの世界では、過激な描写が見られることも多いが、ファッション関係の人達や、ファンからすると全てアートでしかないわけだ。日本においても時々論ぜられる事がある。公共機構官僚のお偉い方達が、どのように見るかは、我々では計り知れないことだ。現在は落ち着いたようだが、欧米でも日本でも名前が売れすぎてしまった有名税的なものかも知れない。それだけ人気のパワーブランドであることの証であり、チャレンジを忘れない姿勢は評価すべきではないだろうか。数年前にはミッキーマウスやドナルドダックを、プリントしたTシャツを発表して、ファッション界を驚かせた。ラグジュワリー・ブランドが、米国民のアイドルでもあるキャラクターを、デザインのメインに置くという、アイデアと勇気は賞賛に値するものだ。その後、驚くほど多くのコピー商品が出回ったのは、周知するところだ。2006年には携帯電話のデザインにも挑戦し、通信機器メーカーのモトローラとコラボレートした端末をアメリカで発売。昨年4月にはNTTドコモからも、ドコモ・オンラインショップで、国内対応モデルを限定発売。その後のオークションではプレミアまでついた。ミラノに本社を置くドルチェ&ガッバーナ・グループは、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンや、グッチなどの、ビック・ブランドのグループには属していない。独立独歩の経営で巨大ブランド企業に成長しつつある。イタリア国内の売上高においても、巨艦グッチ、2位プラダ、3位アルマーニには差があるものの、近年の伸び率は凄まじいものがあり、トップ・スリーを追撃している。日本ではイタリア本社の全額出資で、2001年に「ドルチェアンドガッバーナ・ジャパン」を設立し、ブランドのハンドリングをしている。
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