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5月24日、経営再建中のアパレルメーカー「レナウン」が、中国の繊維メーカー山東如意科技集団と資本・業務提携することを発表。レナウン(既号192.復活なるか!イエイエ娘)が山東如意を引受先に約40億円の第三者割当増資を7月末に実施。山東如意が40%強を出資する筆頭株主となり、3人の取締役を派遣する。レナウンは山東如意の傘下で再建を目指すが、東証一部上場企業が中国企業の傘下に入るのは初めてである。レナウンは増資で得た資金の半分となる20億円で、自社ブランドの出店を日本や中国で実施し、残りは宣伝広告や販売促進に当てるとしている。1902年に大阪で創業したメリヤス問屋が、レナウンの商標を使うようになったのは1923年であった。前年に来日した英国の軍艦名(既号81.フランス語のCM効果)に肖り、後に正式社名とした。当時は世界最先端であった英国の繊維産業に追いつきたいとの、願望があったものと思われる。1960年代には「レナウン娘」の宣伝で一世を風靡。しかし、長引く不況で百貨店向けの販売が低迷し、アパレル界の名門も最近は赤字続きであった。英国高級ブランド「アクアスキュータム」(既号35.トレンチコートとボギー)や、本社ビル売却を進めてきたが、ブランド力の低下には打つべく対策も限られた。歴史のある商品ブランドが多い反面、最近開発した商品ブランドやプロジェクトが、業績に寄与することは無かった。今年2月期の連結決算では109億円の赤字で、4期連続の最終赤字だった。
山東如意は傘下に約20社を持ち、昨年12月期の連結売上高は約1400億円の企業。
昨年12月、中国の自動車部品メーカーである寧波韻昇は、神奈川県にある自動車部品メーカー日興電機工業の、発行済み株式約80%を11億7000万円で取得し、5人の取締役を派遣して傘下に収めた。寧波韻昇は大和証券SMBCプリンシパル・インベストメントや、アジア・リカバリー・ファンドLPなどの再生ファンドが保有する日興電機の普通株式を全て取得。買収資金の半分は自己資金を充て、半分は借入金で賄った。多くの中国企業が外国企業の買収を通じて、先進技術を取り入れている中、寧波韻昇も今回の買収で、サプライチェーンの整備や、製品の研究開発、生産拠点を労働コストの安い中国に移管するなど生産コストの低減にも寄与するとしている。また、経営管理や市場開拓の面でも、補完しあえる関係になるとみられる。日興電機工業は1933年の創業。自動車や建設・産業車両分野で、電装品やモーター、油圧機器、エレクトロニクス製品等を生産するOEMメーカーである。東証二部に上場していたが、1999年に日本市場の縮小により経営難に陥り、会社更生法の適用を申請し事実上の破綻、同年7月に上場廃止になっていた。
日本ではM&A(企業の合併・買収)を通じて、国内に乗り込もうとする外国企業に抵抗してきた長い歴史がある。多くの場合は日本と政治経済や、そして軍事的にも深いつながりのある米国の企業であった。しかし、中国の企業が絡む日本企業のM&Aとなると少し事情が異なってくる。未だ日中関係は強固なものとは云えず、靖国神社が象徴する歴史認識の問題。東シナ海の油田開発が象徴する尖閣諸島など、領土問題の曖昧さを抱え、中国に対して毅然とした態度が取れていない状態にある。政治的に日中関係が不安定な状況にあることは否めず、経済におけるM&Aの件数は少ないまま推移してきた。だか、2007年に日本の最大の貿易相手国が、米国を抜いて中国となってから様子が変わってきた。昨年の中国企業の日本企業買収は倍増しており、285億円と絶対額は少ないとはいえ、金額ベースでは前年の4倍に急増。中国企業のターゲットは、専門的な技術を持つ中小企業や、経営難にあえぐブランドである。日本国内では慢性的な生産過剰と、人口の減少で経済が停滞しており、日本市場進出を意図している訳ではない。中国企業は自国に導入可能で、他国でも使えるような技術や技能、知名度のあるブランドに関心をもっている。質の高いサービスや従業員管理など、日本式経営のノウハウにも学ぶことが多い。買収企業も太陽電池やスポーツウェアー、ゴルフ用品など様々である。後継者難の中小企業が身売りするケースも増えており、人民元が切り上げられれば、さらに加速することも考えられる。日本企業にとっても資本を得るだけでなく、新しい経営思考や、急成長する13億人の巨大市場への足がかりを得るメリットもある。寂れかけていた技術やブランドを再び生かせるなら、中国企業の傘下に入るのも悪い選択ではないかも知れない。しかし、文化や企業風土の違いは摩擦も生みやすく、失敗したケースもある。2003年に中国企業が台湾企業と日本の提携企業が、液晶ディスプレイに使用するカラーフィルターの、製造会社に12億円出資した。しかし、この会社は対立が生じて4年後に廃業。また、基幹技術が流失すればノートパソコンのように、庇を貸して母屋を取られるような場合もある。米IBMは中国企業にパソコンの生産を委託し、その後パソコン事業を売却した。日本でも同様のことがあれば経済の衰退にも繋がってしまう。かつて日本経済がバブルに沸いていた1980年代後半、米国のシンボルとも云われるロックフェラー・センタービルや、映画会社のコロンビアピクチャーズなど、米国の土地や企業を次々と買収し、ジャパンマネーが顰蹙を買った。時代は巡り、世界同時不況の中、今では世界経済の牽引役を任じ、グローバル市場を席巻するチャイナマネーが、これから本格的に日本企業買収に、乗り出して来る可能性も無しとはしない。日本企業は世界規模の競争に、相当の覚悟をもって立ち向かわなければならない。
昨年6月、家電量販店大手ラオックスが、中国の蘇寧電器と日本観光免税との資本・業務提携を行い、第三者割当増資を実施して19億円を調達。両社はラオックス株式の55%を取得し経営権を掌握。ラオックスは昨年の3月期まで、8期連続の赤字が続き経営難に陥っていた。一時は秋葉原(既号132.オタクの聖地)のランドマークとも云われたザ・コンピュータ館を2007年に閉鎖。昨年には郊外型の家電量販事業からも撤退。事業規模を縮小して再建に取り組んでいた。ラオックスが蘇寧電器の傘下入することで、蘇寧電器の情報システムや物流サービス、免税品販売などで中国圏顧客への、販売ノウハウなども取り入れ経営改善を図る。ラオックスのブランド力は中国や東南アジアで高い知名度を有していることから、蘇寧電器を足がかりに物販流通業として、中華圏や海外進出も視野に入れている。購買力が増した中国人観光客が東京に押し寄せ、そのニーズに応えるべく増資で得た資金で、国内店舗を刷新する計画。中国での展開も今後3年間で、110店舗の直販店を開業する計画。3年後には中国での売上高が日本を上回る予定だと云う。また、中国人観光客が日本のラオックスで購入した製品を、蘇寧電器のサービス網でアフターケアを受けることも可能となった。一方、蘇寧電器側もラオックスのブランド力や、小売りサービスノウハウを高く評価しており、家電チェーン店の日本式経営方法を学び、中国本土での市場経営の革新が可能となる。共同仕入れ体制の確立や、両社が自国で展開している売れ筋商品の相互供給、PB商品の共同開発なども実施。具体的には蘇寧電器側はアニメや玩具、楽器などを日本から調達、ラオックス側は安価な中国製品の調達が可能となる。また、双方の人材交流で国際的な人材の育成も可能になるとしている。日本観光免税も中華圏からの訪日観光客と在日中国人を対象とした、顧客誘致や販売ノウハウを持つことから、秋葉原地区の免税品販売事業強化に結びつけていく考えである。こうして見ると、三社とも良いことずくめの資本・業務提携だが、日本最大の電気街である秋葉原、その秋葉原を代表する老舗家電量販店ラオックスが、中国企業の傘下に落ちた。レナウンがイエイエ娘で流行を創り出した当時は、国内最大のファッションブランドだった。今年2月には幅広いファンを持った本間ゴルフも落ちた。かつては業界で名を馳せたブランドが次々に中国に渡るのは、何とも割り切れない気持ちになるのだが・・・。
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