ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 177

☆ 王女のスカーフ☆

2007.11.20号  


ローラ・アシュレイ(Laura Ashley)は、ロンドンでスタートした英国ブランドである。
1953年、ローラとバーナードのアシュレイ夫妻が、ハンド・シルクスクリーンによる、小さなテキスタイル・プリントの仕事を始めた。事業と呼べるほどの規模ではなく、台所・居間・寝室・浴室などからなる、一世帯用の安アパートから苦難のスタートであった。
しかし、アシュレイ夫妻には幸運の女神が微笑み、ローラ・アシュレイの名前が世界的に広まるようになった。それは創業した年の偶然の出来事だった。
独自の感覚から生み出したテキスタイルの、美しい花柄プリントやフェミニンなシルエットが大好評を得た。現在もオリジナル・テキスタイルを使ったレディス・ウェアや、インテリアも含むホーム・ウェアは大変な人気を博している。特に花柄を中心とする優しいディディカルと、カラーを組み合わせてプリントした、レディス・ウェアやハンカチ・スカーフなどの小物類は、時代や年齢、国境を越えて多くの女性達に支持されている。
ローラ・アシュレイの魅力は、品の良いエレガントな感覚や、女性らしいソフトなスタイル、そして洗練されているのに、どことなくイギリスにある田園の懐かしさを、感じさせることにある。「心地よい安らぎ」「心の癒し」がファンの心を引きつけている。

伝統的なイギリスのスタイルと、トレンドを融合させた気品溢れるアイテム展開に定評があるローラ・アシュレイのインテリア・コレクション。ローラ・アシュレイは、インテイア・コーディネートとは「自分自身を表現する」ことと考えている。お気に入りの家具やカーテンに囲まれて過ごす時間は、誰にとっても最も楽しく、そして心が寛げる時間であると考え、それを提案している。
今年の9月にオープン6周年を迎えた国内最大の旗艦店「ローラ・アシュレイ表参道店」がリニューアルした。ホーム・ファニシングのアイテムがさらに充実し、リビング・ルーム、ベッド・ルーム、キッズ・ルームなど、空間ごとのコーディネートを提案している。
ユーザーサイドでは「時間が無くて、じっくり考える暇がない」「好きなテイストやイメージはあるが、実際にどうコーディネートしたら良いか判らない」「一度、プロに相談してアドバイスを受けてみたい」との声が多いのも事実である。ローラ・アシュレイのインテリア・デザイン・サービスでは、このような声に応えるとともに、カーテンや壁紙の色・柄、家具やソファーの形・色、ライティングやクッションなどのインテリア・アクセサリー、陶器やグラスなどのテーブル・ウェアーの選び方まで、顧客宅を訪問して現地にての相談も受けている。実費は交通費程度の1万円であるが、20万円以上の注文で無料となる。大手デパート等ではなかなか出来ない、きめ細かいサービスを提供している。

『ヨーロッパ各国を親善旅行中の、とある小国の女王アンがローマを訪れた。堅苦しい日程が重なり、王女は少々神経が衰弱気味であった。侍医は王女に鎮静剤を飲ませたが、疲労が重なっていたために、かえって目が冴えて眠れなくなってしまった。侍医が居ないことを幸いに、王女は一人で街へ出てみる気になった。しかし、街を歩いているうちに、薬が効いてきて広場のベンチで寝込んでしまった。そこへ偶然アメリカの新聞記者ジョー・ブラドリーが通りかかった。寝ている若い女性を見かねて、彼女を王女とも知らずに介抱するうち、王女はジョーのアパートまでついてきてしまった。翌朝になって彼女の素性が判ったジョーは「王女の秘密、ローマの体験」という大スクープを書こうとした。ジョーは自分の職業を偽って、王女をローマ市内を連れ歩くことに成功。王女は最初に美容院へ行って髪を短く切り、スペイン広場でジェラードを食べ、ジョーとベスパに乗って市内を走り回り、真実の口へ手を入れてはしゃいだ。その様子をジョーの友人カメラマン・アーヴィングが、スクープ写真として次々と撮っていく。しかし、自由を得て生き生きと行動する王女と、ジョーの心の距離は次第に近づくようになり・・・・』
1953年に公開されたオードリー・ヘップバーン(既号116.スクリーンの妖精と衣裳 既号140.ホリーのお気に入り 既号157.1億円の映画衣裳)、グレゴリー・ペック主演「ローマの休日」のあらすじである。オードリーが世界中の映画ファンを魅了したこの映画の中で、頭につけた三角のスカーフや首元に巻いたスカーフが、女性ファンの間で大反響を呼んだ。創業したばかりのアシュレイ夫妻は、偶然にも同じようなヘッドスカーフを始め、ランチマットやナプキンなどの小物を、オリジナル・プリント生地で作って販売していた。ヘッドスカーフはたちまち大ヒットとなり、ローラ・アシュレイがイギリスを代表する大ブランドへと成長する契機となった。

現在、ローラ・アシュレイはイギリス本国を始め、ヨーロッパ、オーストラリア、台湾、香港、シンガポール、マレーシアなど世界28ヶ国366店舗を展開している。日本においては1985年に、1号店として「ローラ・アシュレイ銀座店」をオープンさせた。翌年には英国ローラ・アシュレイ社とイオンとの合弁企業、ローラ・アシュレイ・ジャパンを設立。
2006年末時点で国内81店舗、台湾や韓国などアジアの19店舗を統括している。
店内ではホーム・ファニシングを始め、2007年秋冬コレクションを展開しており、心地よさとスタイリッシュなインテリアを提案している。これからのクリスマスシーズンに向けても、チェックしておきたいギフト用の、小物アイテムをクローズアップさせている。
近年は環境・社会貢献活動にも注力し、ISO14001の認証も受けている。また、チャリティロゴTシャツを販売しており、昨年は収益の一部をTVコマーシャルでも馴染みの、C.W.ニコルが主催するアファンの森財団に寄贈している。




<< echirashi.com トップページ     << ビジネスコラムバックナンバー